平和な日常~夏~2
そこは魔法世界の辺境にある、今にも朽ち果てそうな古い遺跡だった。
「姫御子はまだ見つからぬか」
光が全く届かない遺跡の奥深くでは、仮面を付けて全身隠すようなローブを身に纏った男が少し不機嫌そうに一言呟く。
無音のその場所で彼の声は反響するように響き渡るが、対面する白い髪の少年は無言のままだ。
「恐らく旧世界だろう。 僕達やメガロから姫御子を隠せる場所はそう多くはない」
「可能性が一番高いのはやはりタカミチの近くか……」
仮面の男はデュナミスであり、白い髪の少年はフェイト・アーウェルンクスである。
もうお分かりだろうが、彼らは秘密結社完全なる世界の生き残りだった。
約二十年前にナギ達に計画を阻止されて以降も彼らはナギ達赤き翼の面々と戦いを続けたが、約九年前に主である創造主を失ってからは忍耐の日々を送っている。
協力者や組織の人間を高畑やクルト・ゲーテルに殲滅され続け、最早残るのは彼ら二人とフェイトが助けた数名の孤児だけなのだ。
そんな彼らだが、まだ一筋の希望があった。
魔法世界の鍵を握る存在である黄昏れの姫御子ことアスナ姫の存在である。
世界を書き換えることの出来る鍵であるアスナ姫さえ押さえれば、彼らにも十分悲願達成の目処はあるのだ。
「僕は京都に行くよ。 姫御子を隠すにはあそこが最も最適だからね」
しばしの沈黙が辺りを支配するが、フェイトは次の行く先を告げると立ち上がる。
関西呪術協会の本拠地である京都は、メガロの勢力の力が最も及ばない地域の一つである。
加えて歴史と伝統を重んじており、閉鎖的な組織は外部との関わりが少なく情報が外に漏れることはまずなかった。
長である詠春は赤き翼のメンバーであるし対人戦では世界最強集団とも言われる神鳴流もあり、姫御子を匿うにはそれ以上ない場所なのだ。
デュナミスや部下である孤児達は魔法世界人なため地球には簡単には行けない。
そのためフェイトは一人でアスナ姫の行方を追って、彼らが旧世界と呼ぶ地球に行くことにしたようだ。
「そういえば、奴の息子はどうなった?」
「ロンドンに居るよ。 彼は厄介者扱いで行く先がないらしい」
「そうか」
立ち上がったフェイトにデュナミスはネギの情報を尋ねるが、特にそれ以上は気にする要素はなかったらしい。
フェイトが転移魔法で消えた後、彼はその場を動くことなく静かに時が過ぎるのを待つしか出来なかった。
「どう考えても横島が気に入るタイプではないな」
一方異空間アジトではやはり土偶羅がフェイトとデュナミスの様子を見ており、二人の会話に深いため息をはく。
はっきり言うとフェイト・アーウェルンクスは、だいぶ前から土偶羅に目を付けられていた。
その存在が地球側の魂とも魔法世界の魂とも違うフェイト・アーウェルンクスは、異空間アジトのシステムで簡単に見つかったのだ。
高い魔力に異質な存在とくれば、土偶羅に見つからない方がおかしい。
横島にはまだ報告はしてないが、土偶羅は彼らの目的や行動をかなり精密に調査している。
正直、土偶羅としては彼らが魔法世界から出て欲しくないのが本音だった。
秘密結社完全なる世界の価値観や目的は、明らかに横島の価値観と合うモノではないのだから
「姫御子はまだ見つからぬか」
光が全く届かない遺跡の奥深くでは、仮面を付けて全身隠すようなローブを身に纏った男が少し不機嫌そうに一言呟く。
無音のその場所で彼の声は反響するように響き渡るが、対面する白い髪の少年は無言のままだ。
「恐らく旧世界だろう。 僕達やメガロから姫御子を隠せる場所はそう多くはない」
「可能性が一番高いのはやはりタカミチの近くか……」
仮面の男はデュナミスであり、白い髪の少年はフェイト・アーウェルンクスである。
もうお分かりだろうが、彼らは秘密結社完全なる世界の生き残りだった。
約二十年前にナギ達に計画を阻止されて以降も彼らはナギ達赤き翼の面々と戦いを続けたが、約九年前に主である創造主を失ってからは忍耐の日々を送っている。
協力者や組織の人間を高畑やクルト・ゲーテルに殲滅され続け、最早残るのは彼ら二人とフェイトが助けた数名の孤児だけなのだ。
そんな彼らだが、まだ一筋の希望があった。
魔法世界の鍵を握る存在である黄昏れの姫御子ことアスナ姫の存在である。
世界を書き換えることの出来る鍵であるアスナ姫さえ押さえれば、彼らにも十分悲願達成の目処はあるのだ。
「僕は京都に行くよ。 姫御子を隠すにはあそこが最も最適だからね」
しばしの沈黙が辺りを支配するが、フェイトは次の行く先を告げると立ち上がる。
関西呪術協会の本拠地である京都は、メガロの勢力の力が最も及ばない地域の一つである。
加えて歴史と伝統を重んじており、閉鎖的な組織は外部との関わりが少なく情報が外に漏れることはまずなかった。
長である詠春は赤き翼のメンバーであるし対人戦では世界最強集団とも言われる神鳴流もあり、姫御子を匿うにはそれ以上ない場所なのだ。
デュナミスや部下である孤児達は魔法世界人なため地球には簡単には行けない。
そのためフェイトは一人でアスナ姫の行方を追って、彼らが旧世界と呼ぶ地球に行くことにしたようだ。
「そういえば、奴の息子はどうなった?」
「ロンドンに居るよ。 彼は厄介者扱いで行く先がないらしい」
「そうか」
立ち上がったフェイトにデュナミスはネギの情報を尋ねるが、特にそれ以上は気にする要素はなかったらしい。
フェイトが転移魔法で消えた後、彼はその場を動くことなく静かに時が過ぎるのを待つしか出来なかった。
「どう考えても横島が気に入るタイプではないな」
一方異空間アジトではやはり土偶羅がフェイトとデュナミスの様子を見ており、二人の会話に深いため息をはく。
はっきり言うとフェイト・アーウェルンクスは、だいぶ前から土偶羅に目を付けられていた。
その存在が地球側の魂とも魔法世界の魂とも違うフェイト・アーウェルンクスは、異空間アジトのシステムで簡単に見つかったのだ。
高い魔力に異質な存在とくれば、土偶羅に見つからない方がおかしい。
横島にはまだ報告はしてないが、土偶羅は彼らの目的や行動をかなり精密に調査している。
正直、土偶羅としては彼らが魔法世界から出て欲しくないのが本音だった。
秘密結社完全なる世界の価値観や目的は、明らかに横島の価値観と合うモノではないのだから