平和な日常~夏~2

その後買い物を終えて店に戻った木乃香達だったが、店では横島が椅子に座った女子高生相手に肩揉みとマッサージをしていた。

その姿は事情を知らない木乃香達からすると何をしてるのかすぐには理解出来ずに、木乃香と明日菜はポカーンとしてしまう。

まさか喫茶店で女子高生相手にマッサージをしてるとは思いもしなかったらしい。


「本当にマッサージは上手いですよ。 私の肩凝りも随分楽になりましたから」

驚く木乃香達はバイトをしている夕映に事情を聞くが、横島が気まぐれで始めたマッサージが思いのほか上手であの後も志願者が相次いだようである。

適度な痛みと気持ち良さに時々変な声を上げる子もおり、周りの客の笑いを誘ったり横島が悪のりしたりと相変わらず賑やかだったようだ。


「なんか……、端から見ると微妙に恥ずかしい光景ね」

凝りがほぐれていく気持ち良さに肩揉みされてる女の子が幸せそうな表情を浮かべているが、周りの客の注目を集めており微妙に恥ずかしい光景に明日菜には見えたらしい。

しかも横島も楽しそうであり、若干悪のりして肩揉みする姿は横島の顔だけ見てるとセクハラしてる姿にも見えなくもないのだ。

昔の横島ならばこんな時は突っ込まれるのだろうが、残念ながら麻帆良では女の人が苦手なのに逆に頑張ってると褒められるくらいである。


「マスター、ついでに胸も揉んで大きくしてよ」

「任せとけ……って出来るか! セクハラになるだろうが!!」

「セクハラは相手が嫌がったらセクハラなんだよ。 だから大丈夫!」

「全然大丈夫じゃねえ! 今まで築き上げて来た俺の爽やかなイメージが壊れるだろうが!」

凄まじい女子高生のパワーの凄さに押されっぱなしな横島だが、相変わらず笑いは取っているらしい。

かつて散々セクハラなんかをした横島だったが、やはり現在は立場が逆になっている。

まあ別に横島がセクハラされる訳ではないが、結構下ネタでからかわれることも多いのだ。

基本的に女の人が苦手な横島をからかってるだけなのだろうが、ほとんどの場合悪意はなく好意的な感じなので横島にはどうしようもなかった。


「あれ、マスターの彼女帰って来たじゃん。 大変! 浮気がバレるわよ」

「だから彼女じゃないって言ってるだろうが。 だいたい俺の彼女にされたら木乃香ちゃんが可哀相だろ。 それに肩凝りが酷いって言うからマッサージしてるのに、なんで浮気になるんだよ」

そのまま賑やかな横島と周りの女子高生達だが、木乃香の姿を見つけると彼女が来たと騒ぎ立てる。

例の麻帆良祭の写真以降、変わらず横島と木乃香はあの写真でからかわれることが多かった。

一部の女子高生なんかは、木乃香に横島の彼女とあだ名を付けていたりする。

これは彼女達が木乃香が学園長の孫だと知らないことも理由の一つだった。

横島や明日菜達が木乃香と呼ぶので名前は知ってるが、まさかそんなお嬢様だとは店の常連のほとんどが知らないのである。

そしてこの日から横島はマッサージが上手い喫茶店のマスターという新たな称号が増えてしまい、新たな噂として広まることになるが今更なことだった。


46/100ページ
スキ