平和な日常~夏~2

「あっ……、そこは効きくです」

一方その頃横島はといえば、何故か夕映の肩を揉んでいた。

思わず変な声を上げそうになり若干赤面する夕映だが、それだけ肩揉みが気持ちよかったのである。


「こりゃまた酷い肩凝りだな。 いったいいつからなんだ?」

「……さあ? 昔から本をよく読んでましたので……」

懲り固まった筋肉を揉みほぐしていく横島だが、中学生には思えないほど肩が凝っている原因は読書らしい。

昔から読書が好きだった夕映だが、いつの頃からか酷い肩凝りに悩むようになっていたようだ。

客もまばらで比較的暇になった頃、自分で肩の凝りをほぐす仕種をした夕映に横島が肩揉みをしてあげると告げると半ば強引に肩揉みを始めたのである。


(ちょっと体のバランスがズレてるな。 それにチャクラの流れも少し悪い。 ついでに治してやるか)

最初横島が肩揉みをすると言い出した時には若干不安そうだった夕映だが、意外と上手い肩揉みにいつの間にか身を委ねていた。

そんな中で肩揉みをしながらも肩凝りの原因を探っていた横島は、体のバランスが微妙にズレてるところや体の霊力の流れが微妙に悪いことに気付き密かに改善を始める。

肩から背中や腰にかけてマッサージしながら体の歪みを矯正しつつ霊力の流れを密かに正していく。

一連の作業は端から見るとただの肩揉みやマッサージで、下手するとマッサージをしてるコントにすら見えるのだが効果は当然桁違いである。

体の血や霊力の巡りが良くなると夕映の顔はまるで風呂上がりのように微かな赤みを帯びていき、今まで重かった肩が嘘のように軽くなるのだから夕映は若干放心したような様子で肩揉みに酔いしれていた。


「読書もいいけど、たまには休憩や運動しないとダメだぞ。 まさか中学生で肩凝りに悩んでるとはな~」

途中ふざけたりしながらも肩揉みは続き、お客が来たりして中断もするが合計で三十分ほど肩揉みをすると先程までの凝りが嘘のように軽くなっている。

元々の状態が酷いので流石に完全に完治まではしてないが、肩凝りに悩むレベルでは無くなっていた。


「まるで自分の肩ではないようです。 痛みや重みが無くなって逆に違和感が……」

夕映には珍しく他人から見ても分かるほどテンションが高い様子で喜ぶが、そんな一連のやり取りを店内に居た常連は当然見ている。

喫茶店の店主がバイトの中学生の肩揉みを営業中にするという光景は奇妙だが、最早横島の店ではこの程度では珍しくもなんともない。

そして僅か三十分で驚くほど表情が明るくなった夕映を見てると、自分も肩揉みして欲しいと言い出す人が現れるのが横島の店の特徴だった。

常連は気軽に声をかけるどころか、横島をからかう者も少なくないので今更なことだが……。


「マスター、私にも肩揉みして~!」

夕映の肩揉みを終えて一息つく横島だったが、同じように肩凝りに悩む常連の女子高生に迫られるように肩揉みを頼まれたのは自業自得だろう。

結局この後しばらく常連の女子高生に肩揉みやマッサージをすることになる横島であった。



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