平和な日常~夏~2

同じ日雪広グループと超包子では、いよいよ麻帆良祭でのフレンチカレーを発売していた。

麻帆良祭からおよそ一ヶ月であるこの日に一番評判だったフレンチカレーを、麻帆良カレーとして発売したのである。

雪広グループでは系列レストランでの発売と、紆余曲折あったレトルトでの同時発売だった。

日本最大の学園祭である麻帆良祭の人気投票で一位に輝いたと結構な宣伝をしており、あやかなどは一部マスコミや雑誌の取材なども受けている。

一応メニューの開発者は2ーAと超包子と横島の連名になっており、この辺りは横島が望んだ通り出来るだけ目立たないように配慮したらしい。

最も一部のマスコミは横島の噂を聞き付けたらしく取材の申し込みもあったが、以前から付き合いがあった麻帆良学園報道部の取材に応じた以外は全て断っていた。

横島自身も一応この件に協力はしているが、それは主にレシピなどに限られており販売戦略や広報活動はノータッチなのである。

ちなみにこの一ヶ月で変化があったことと言えば、フレンチカレーを真似たカレーが麻帆良の飲食店で新メニューにした店が何件かあるくらいだろう。

麻帆良祭期間中はほとんどなかったが、麻帆良祭での評判からフレンチカレーを独自に研究アレンジして出す店が現れたのはある意味当然のことだった。

その味や評判はそれこそピンからキリまであるが、麻帆良では何故かカレーが密かなブームになりつつある。

そんな中で雪広グループと超包子が本家本元のカレーを販売するとあって、両社は夏休みの暑い最中にも関わらず結構な客の入りで混雑していた。


「なんでカレー作らかったん?」

一方の横島の店ではお昼からバイトに来た木乃香が、横島に何故フレンチカレーを作らないのかと尋ねる。

実は今朝からフレンチカレーを求めた客が横島の店にまでぽつぽつとやって来ていたのだ。

一応横島が開発者なことは可能な限り目立たないようにしてはいるが、それでも麻帆良の人間で情報に敏感な人は当然知っている。

そんな人達は雪広や超包子と同時に横島の店でも売り出すと勘違いして来る者が結構いたのだ。


「いや別に理由はないけど、この暑い時にわざわざあのカレー作らんでも……。 超包子と雪広グループのレストランで食えるし」

不思議そうに尋ねる木乃香に横島も何故自分の店に来るのか若干不思議そうにするが、どうせならば本物が食べたいと考える人も結構居るのだろう。

ただ横島としては最近は暑いのでアイスやかき氷などに凝っており、この日は作りたい物と客の要望が微妙に噛み合ってなかった。


「そうだ、冷たくても美味しいカレーでも作ってみようか」

「貴方という人は……」

基本的に気分で料理をする横島はフレンチカレーよりは新しいカレーを作ろうかと考え始めるが、夕映や木乃香に説得されてしばらくはフレンチカレーを作ることになる。

普通に楽しみにして来る客が木乃香達は可哀相だったのだろう。




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