平和な日常~夏~2

「あの……、私いつまでこのままなんですか?」

そのまま帰宅してタマモをお風呂に入れて寝かしつけた横島はビールを片手に一息つくが、そんな横島に不思議そうに尋ねたのは今だに実体化したままのさよだった。


「いつでも元に戻せるけど、しばらくそのままでいいんじゃないか? 夏休みに遊びに来たってことにしてるんだしさ」

どうもさよは家に戻れば元の姿に戻ると考えてたらしいが、横島は割といい加減でしばらくそのままでもいいんじゃないかと考えている。

せっかく夏休みに麻帆良に遊びに来た友人の娘という設定を考えたのだし、夏休み期間中はそのまま実体化したままの方が何かと楽しめるのではと考えたらしい。


「いいんですか?」

「いいんじゃないか」

まさか当分実体化したままになるかもしれないという現実にさよは若干戸惑うが、横島は問題ないと考えている。

おそらく魔法関係者の一部にはさよの正体はバレるだろうが、実体化の秘密まではバレないはずなのだ。

元々この世界には神族が人界には存在しないので、横島の術の正体を知る者はいない。

まあ陰陽術などには似たような術がある可能性は高いし、横島が何かしらの術でさよを実体化したと気付かれてもさほど問題は起きないはずである。

ただ横島としては魔法協会との距離感には一応今でも気をつけており、正直あまり魔法や術などで目立ちたくはないのだが、タマモを横島が保護してる件はすでに知られていたので今更なことでもあった。

面倒な事は避けたいと思う気持ちとさよには夏休みを楽しんで欲しいとの想いを天秤にかけた結果、やはりさよを優先させようとの結論に至ったようである。


「ただ名前は相坂さよじゃない方がいいかもな。 悪いけど氷室さよって名乗ってくれ」

とりあえず夏休み期間中はさよを実体化したままにしようと考えた横島は、一応名前を変える事を決めて過去の設定を考え始めた。

名前の氷室の由来は言うまでもないから省くが、関東の田舎に住んでいるが最近まで身体が弱くて学校にあまり行って無かったとの架空の設定を考える。


「氷室さよですか?」

「大丈夫だとは思うけど、幽霊と同姓同名で顔もそっくりだとバレると騒がれるからな。 名字だけでも違えば他人の空似で済ませることが出来るからさ」

突然見知らぬ名字を名乗るように言われたさよは不思議そうな表情をするが、これは報道部など裏に関係ない者への一応の対策であった。

というか横島はさよの件も例によって細かい問題は土偶羅に丸投げ予定なのだ。

まあ基本的にはまずい問題にならないか監視させる程度だったが……。


「さよちゃんにはタマモのことでも助けてもらってるしな。 まあ夏休みの間はその姿で楽しんでくれ」

一応正体がバレないよう気をつけるように告げた横島だが、さよに夏休みを楽しむようにとも告げていた。

タマモが復活して以来、何かとさよには世話になってるのだ。

特に夜などはタマモの相手をして、寂しくないように寝かしつけているのもさよである。

横島はそんなさよに思い出に残るような夏休みをあげたいと考えたようだった。


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