平和な日常~夏~2

そのまま涙を流しながらも美味しそうに料理を頬張るさよの姿に、周りの客は少し不思議そうな表情をしていた。

タマモはそんなさよを心配そうに見つめるが、さよはタマモに大丈夫だからといい笑顔を見せる。

ただ流れる涙が止まらないのは、悲しみや喜びを越えた感情の爆発があったからかもしれない。

しかし美味しい料理の数々にさよは徐々に慣れていき、しばらくするとようやく涙が止まることになる。

ちなみに三人はそんな中でもしっかり食事をしており、横島のみならずタマモやさよも大人顔負けなほどよく食べていた。



その後食事を終えた横島達は心機一転して観光を続けるが、さよとタマモはショッピングなどよりは純粋な観光の方が好きなようである。

横島としてはせっかくだから服でも買ってやろうか考えていたが、二人はあまり興味がないらしい。

その結果横島達は夕方まで観光と食事を中心に都内を歩き回ることになる。

特に六十年ぶりに食事をしたさよの喜びと食に対する好奇心は相当なもので、料理店を見ればどこでも食べたそうにしていた。

実際幽霊であるさよは、横島やタマモと同じで食事が必要な訳ではなく嗜好品なのである。

従って食べたい分だけ食べても太りはしないが、それでも実体化してる現状では消化する時間は必要らしい。

お腹の空き具合と相談しながら泣く泣く店を離れていくさよに、横島はまた今度来ようと約束するしか出来なかった。


「おみやげがほしい」

そのまま夕方くらいまで観光と食べ歩きをしていた横島達だったが、暑さもようやく落ち着く時間になるとタマモは突然お土産を買いたいと言い出す。

どうもテレビの旅番組で知らない場所に行ったら、親しい人にお土産を買うものだと知ったらしい。


「お土産買って帰るのか? 東京は割と近いしお土産買うほどじゃないんだが……」

麻帆良の人間に東京土産が必要とはあまり思えない横島だったが、タマモはお土産を買う気満々だった。

まあタマモが楽しみにしてるならいいかと考えた横島は、お土産を買うべくそれらしい店に二人を連れて行く。

知り合いの人数を指折り数えてお土産を選ぶタマモだったが、一つ問題なのはタマモには金銭感覚がまるでないことだった。

無論商品には値段が付いてるのは知っているし欲しい物を買うにはお金が必要なのも理解はしているが、具体的な金銭感覚はまるでない。

それと言うのも横島は基本的にタマモが欲しいと言えば、考えるまでもなく買い与えていたのだ。

元々物欲がほとんどないタマモなだけに何かを欲しがる機会がほとんど無かったのだ。

従ってたまに欲しい物がある様子を見せたら積極的に買っていたのである。

そのため今回もタマモはさよと一緒に、お土産用のお菓子やストラップなどを大量に買い込むことになる。

支払い時にその値段を見た横島の顔が一瞬固まるがこれが自分の欲のためならばともかく、いつも優しくしてくれる人にタマモがお土産を買いたいと純粋に願う想いを邪魔など出来るはずがなかった。

結局横島は土偶羅から貰っていたカードで支払いをして、自宅まで送って貰う手続きをすることになる。


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