さて賑やかな時間があっという間に過ぎていき夜になると、麻帆良の街はある程度静けさを取り戻していた。

時折花火の音がどこからともなく聞こえて来るが、それでも煩いというほどではなく夏を感じる程度だろう。

横島は夕方に土具羅に頼んだ千鶴の情報が届いていたのでさっそく目を通していくが、特別気にするような背後関係などはないらしくホッとする。

明らかに考え過ぎだったのだが、資産家の家柄や魔法協会と那波家の関わりなど千鶴が特定の目的を持つ第三者に目を付けられる可能性を横島は少し気にしていたのだ。


（ただモテてるだけかよ。　少し財産目当てらしき奴はいるが、あわよくばって程度だし問題にするレベルじゃないな）

ここ最近の間に千鶴に対して告白や誘った男のリストを見ていた横島だが、本当にただモテてるだけだった。

容姿端麗で性格も良いい上、資産家の家柄など感じないような庶民的な感じも評判がいいらしい。


（まあ、あのスタイルと美貌でモテない方がおかしいよな～　しかも優しいし）

千鶴に告白した男達の気持ちを横島は痛いほど理解している。

生まれ育った環境からか、千鶴は他人に対しての接し方が本当に上手かった。

年上の男性に対しては自然と立ててあげるし、さり気ない優しさが目立つのだ。

男達が勘違いするのも仕方ないと横島はシミジミ感じる。



一方ノートパソコンを見つめる横島の隣ではタマモが絵日記を描いていた。

実は今日の夕方、木乃香達に夏休みが何なのかを教えてもらっていたのだ。

その中で夏休みには宿題があると聞いたタマモが自分も宿題がしたいと言い出したので、木乃香のアイデアで絵日記を毎日つけることになっていたのである。


「そういや、さよちゃんを麻帆良の外に連れて行く約束してたな。　明日は店を休みにしてみんなで遊びに行くか？」

そんな絵日記を書くタマモと楽しそうにテレビを見るさよを見た横島は、たまには二人をどっかに連れて行ってやらないとダメだとふと思ったらしい。

麻帆良祭以降、横島は店を一日中休んだことは全くなかったのだ。

横島自身は趣味でやってるような店なのでいいのだが、さよとタマモには人並みに遊びに連れて行ってやりたいようである。


「遊びにですか？」

「ああ、麻帆良祭の時に約束しただろ。　結構店とか忙しくて後回しにしちゃったけど、明日から夏休みだしな」

突然明日遊びに行こうと誘われたさよは驚きの表情で横島を見つめる。

基本的に平日は毎日きちんと学校に行くさよと土日は店で忙しい横島は、なかなか遊びに行くタイミングがなかったのだ


「どこにいくの？」

「とりあえず東京に行こうか？　明日眠くならないように今日はしっかり寝ような」

横島としては単なる思い付きで言ったのだが、さよとタマモは想像以上に嬉しいらしく二人ではしゃいでいた。

そんな二人の姿に横島はもう少し早く遊びに連れて行ってやるべきだったかと少し申し訳なく感じるが、それにしても嬉しそうにはしゃぐ二人の姿には思わず笑みがこぼれていた。