平和な日常~夏~2

「スイーツを入れるショーケースですか。 確かに最近の店にはありますからね」

その日の夕方になり例によって店に集まった木乃香達に横島はショーケースの話を相談するが、彼女達も以前からショーケースが必要だと感じていたらしい。

なかなか昔ながらの喫茶店にはないが、最近の店にはショーケースがある店は決して珍しくない訳だし。

加えて横島の店の売り上げがスイーツの持ち帰り販売で黒字化してる事実は彼女達も理解している。

流石に具体的な収支までは知るはずがないが、ほぼ毎日のように店に来ている彼女達からすると何が売れてるかくらいは簡単に見当はつく。

木乃香はあまり深く考えてないようで置けばいいと考えてるようだったが、夕映は割と真剣に店内を見渡し雰囲気や仕事のしやすさなどを考えていた。


「予算はどのくらいなんですか?」

「さあ、俺ショーケースの値段とか知らないし……」

夕映と一緒に真剣に考えていたのどかは当然のように予算を聞くが、横島は予算までは考えて無かったようである。

相変わらずいい加減な横島に夕映や明日菜のみならず値段を聞いたのどかも苦笑いを浮かべるが、イマイチ金銭面でいい加減な横島らしいと言えばらしかった。


「相変わらず行き当たりばったりなんだから」

横島としては値段なんかも含めて木乃香達に相談してるのだが、木乃香達から見るといい加減にしか見えないようである。

まあ彼女達から見て横島のいい加減さは時にはいい方に働くが、問題が店の経営となると不安になるらしい。

明日菜は相変わらずな横島にため息をつくが、横島はやはり笑ってごまかすだけだった。


「とりあえず値段や大きさを調べる方が先ですね。 正直あまり大きなショーケースは必要ないでしょうし、小さなショーケースを入口付近に置くのなら雰囲気も壊さないかも知れません」

しばらくおしゃべりしながら考えていた木乃香達だったが、最終的には夕映の値段や大きさを調べるのを優先させるべきだとの意見に纏まる。

以前も説明したが基本的に横島の店は無駄と言えるほど広かった。

入口からはカウンター席や店内が見渡せるが、入口付近にはそれなりに広い入口フロアが存在するのだ。

会計に使ってるレジは置いてあるが、他は使ってないスペースが余っているのでショーケースの一つくらいなら問題なく置ける。

元々は洋食屋だったので入口付近は広めのフロアにしたのだろうが、現状の喫茶店だとちょっと広すぎる感じも否めなかった。

まあショーケースを置くスペースは十分あるのだが、問題は大きさと配置だろう。

正直横島が現状で毎日作ってるスイーツのメニュー数を考えると、本格的なケーキ屋などよりずっと少なくショーケースも小型ので十分なのだ。

ただショーケースを置くにしても現状の空いてる空間にそのまま置くのでは寂しいというか違和感がある。

本来ならば店に合わせて大きめのショーケースを置けば見栄えもするしいいのだろうが、それは横島の負担を考えると難しい訳だし……

横島は割と気軽に相談したのだが、いい加減というか深く考えない横島を理解してる夕映は一人真剣に検討していた。



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