平和な日常~夏~2

一方魔法学校を卒業してメルディアナを旅だったネギと祖父の二人は、イギリスのロンドンを訪れていた。

未来への希望に瞳輝かせるネギと対照的に、祖父は穏やかな笑みを浮かべつつも言葉に出来ない不安を感じている。


(やはり常識がないのう)

メルディアナを離れてまだ数日だが、祖父がこの数日で一番感じたのは不自然なほどの常識の無さであった。

加えて天才的な頭脳と魔法の才能の割に精神年齢は年相応なのだ。

ここまで来るまでにもネギは杖で空を飛ぼうとしたかと思えば、くしゃみと共に魔力が漏れて周囲に不自然な風を起こすなど問題になりそうな行動が少なくない。

結局祖父はネギから杖を取り上げてしまい、許可なく魔法を使うことを禁止するしかなかったのである。


(普通はもう少し自然に常識を理解するもんじゃが……)

現在九歳のネギはまだまだ子供とはいえ、それにしても常識が無さ過ぎたことに祖父は少なからず衝撃を受けていた。

まあ実際に年齢を考えれば仕方ない部分も多いが、なまじ優秀なだけに欠点が目立ってしまうのだ。

普通は学校での集団生活や地域社会との繋がりから学ぶ常識を誰もネギに教えてなかったのは、祖父自身にも責任はあるとはいえ頭の痛い問題である。


そしてもう一つ祖父を悩ませてる存在は二人を常時監視する存在であった。

流石に露骨な尾行はされてないが、魔法や使い魔など間接的な方法で二人は常時監視されているのだ。

まああれだけ騒ぎになったネギをただ放置するほど世界は甘くはないし、この先の行動次第では監視が刺客に変わるのも有り得ない話ではない。

まさしく問題山積みの波乱の旅に祖父は一人で悩んでいた。



一方ネギにこだわっていた高畑はといえば、とりあえず現状維持のままであった。

本音を言えばネギの力に成りたい想いはあるようだが、流石に現在の自分の立場や仕事を投げ出して行けるほど無責任ではない。

一般教師からは微妙な扱いの高畑も、本人としては教師も中途半端にしてるつもりはないのだから。

加えて高畑とネギの必要以上の接近は、メガロメセンブリアの一部の勢力を刺激しそうな気配もある。

高畑本人は知らないがメガロ元老院の一部勢力はネギに二十年前の真実を知られるのを警戒してる者もいるのだ。

二十年前の戦争と戦後の魔法世界でのメセンブリーナ連合の行動は、全て秘密結社完全なる世界を悪のテロリストとすることで成り立っていると言っても過言ではない。

英雄であるナギとメガロ元老院が悪と断罪したアリカ女王の息子であるネギが、二十年前の真実を知ったらどうするのか。

はっきり言えばメガロメセンブリアにとってはネギは厄介どころではなかった。

近右衛門やネギの祖父はその辺りの事情を知るが故に、高畑がネギの元に行くのを現状では止めたのである。

まあ近右衛門は高畑を心配し祖父はネギを心配していたので多少の認識の違いはあるが、現状では誰もこれ以上の問題は望んでなかった。

薄氷の上の自由と平和とは知らぬネギは、一人希望とやる気に満ちた表情で日々育っている。



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