横島君のお店開店

「いい加減値段をきちんと考えた方がいいと思うです」

メニューを見た夕映はため息をはき、値段を考える必要性を木乃香に伝える

実は木乃香や夕映などの中等部の生徒は、普通の中学生よりもお金に余裕があった

寮暮らしな為に食費などの生活費を結構持っているのだ

従ってただでさえ安い喫茶店の料金を更に割引して貰うほどお金に困ってない

横島があまりにお人よしに見える夕映は、喫茶店が赤字で失敗しないかハラハラしてる部分があるようだ


「横島さんは赤字じゃないっては言うてはるんやけど……」

「やはり儲かりはしてないんですね。 一度きちんと話した方が良さそうです」

横島としてはサービスのつもりなのだが、過剰なサービスは逆に夕映に不安を与える結果となっている

横島の好意を理解してるが故に、最近は過剰なサービスを止めるように話したりしていた


「おまたせ。 熱いから気をつけてな」

夕映と木乃香がそんな心配をしてるとは知らない横島は、いつものように夕映とのどかにラーメンを持って来る


「美味しいね、夕映」

「はい、ですが本場の札幌ラーメンなのでしょうか? 前に食べた札幌ラーメンと違うです」

熱々のラーメンを食べていくのどかと夕映だが、夕映は以前食べた札幌ラーメンと違う気がしていた


「札幌ラーメンって言っても明確なレシピがある訳じゃないからな。 店によっても味は違うんだろうよ。 一応本場の味を再現したつもりなんだがな」

のどかと夕映に説明しつつ様子を見る横島だが、二人が美味しそうに食べてる姿に満足そうである

すると二人につられるようにラーメンの注文が増えて、横島はさっそく調理にかかっていく



「よう、エヴァ。 これからお昼かい?」

「貴様には関係ないだろう」

一方店の前ではエヴァと高畑がばったり会ってしまう

顔を見るなり迷惑そうな表情を浮かべるエヴァに高畑は苦笑いを浮かべるが、二人の目的は同じ喫茶店だった


「貴様ここの人間と知り合いか?」

同じ喫茶店に入ろうとした高畑にエヴァは横島が高畑の知り合いかと考える

横島が一般人ではないと感じてるエヴァは、高畑の知り合いならば妙な人間でも説明がつくと考えたらしい


「いや知らないけど……、やっぱり裏の人間かい?」

エヴァの言葉に高畑は横島の正体を見抜いたのかと思い、単刀直入に尋ねる

横島に関して魔法協会では一般人でないの事は、ほぼ確実視されていた

しかしその正体はイマイチ掴めてない

組織と関わらない隠れ里やその末裔などではとの考察だが、何も確証がないのが現状だった


「知らん。 ここから出れない私が貴様が知らない事を知る訳がない。 ジジイにでも聞けばいいだろう」

高畑が横島を知らない様子に気付いたエヴァだが、正直それ以上興味はなかった

高畑を置いて先に店に入るが……、そこでは客の半数がラーメンを食べている


「あれ、ラーメン屋に変えたのかな? 喫茶店だって聞いたんだけど……」

店の入口で固まるエヴァに続いて店内に入った高畑は、あまりにラーメンを食べる人の多さに店を変えたのかと思ったらしい


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