平和な日常~夏~

そのまま料理がある程度出揃うとパーティーは始まるが、この日は珍しく高畑も参加している。

麻帆良祭の最終日や後日に行われた雪広邸での打ち上げには忙しいからと参加出来なかったが、今日は時間があるらしく参加しているのだ。


「君は……」

「先生知らないの? マスターが預かってる子でタマモちゃんだよ」

「はじめまして」

高畑を含めこの日は2-Aのクラスメートが珍しく全員揃ったのでパーティーは始まるが、高畑は始めて会うタマモに僅かに驚きの表情を見せる。

その表情に近くに居た少女の一人がタマモの存在を説明すると、タマモは少し表情に乏しい笑顔で挨拶をしていた。


「そうか……、よろしく頼むよ」

純粋な瞳と視線に高畑はすぐに柔らかい表情に変わり優しく挨拶を返すが、幼いタマモの姿に何故か明日菜の幼い頃を思い出してしまう。

もちろん高畑はタマモが人間でないことにはすぐに気付いていたが、微妙に表情が乏しいタマモの笑顔にかつてのアスナ姫を重ねてしまったようである。


「タマちゃん、こっち来て一緒に食べようよ!」

そんな高畑と初対面したタマモだが、それ以上話をする前に美砂達や他の少女達に引っ張っられて行く。

ある意味一番人気だったのはタマモであり、あちこちから声がかかりタマモはそれらのテーブルを渡り歩いて食事やおしゃべりに参加していた。


「パーティーするならもう少し早く言ってくれれば、作れる料理の幅が広がったんだけどな」

一方の横島はフロアの様子を見ながら追加の料理を作っていたが、流石に急な依頼だと作れない料理もあったらしい。

まあそれでも料理の品数が少ない訳ではないので、ただ単に横島が作りたい料理が作れなかったのが残念なだけのようだが。


「一体どこであれほど料理を学んだのか不思議ネ」

「作れない料理とかないんでしょうか?」

対して同じ厨房で料理をする超包子の超と五月は、相変わらず不思議そうな表情で横島を見つめていた。

和食と洋食が隣同士の鍋で煮込まれていたり、同時進行で調理を進める姿はいつ見ても不思議な光景なのである。

まあ大衆食堂やファミレスの厨房なら理解するが、横島の場合料理が本格的で美味いのだから流石に不思議に思って当然だろう。

他にも同じように多国籍に料理を作れる人は当然居るだろうが、珍しいのに変わりはないし実際に調理する姿を見てると驚いてしまうらしい。

そんな調理もメインの料理に続き、デザート類を作り終えると横島達や超達もようやく楽しむ側に回る。

相変わらずお酒も入ってないのにテンションが高い少女達に、横島は終始押され気味だったが楽しんでいたのに変わりはない。

日頃クラスの集まりにほとんど参加しないエヴァまでこの日は何故か来ており、裕奈や美砂達に絡まれつつ料理を楽しんでいる。

他にはさよや茶々丸など料理を食べれない者も、パーティーの賑やかな場所は好きなようだ。

まあ段々と収集がつかなくなり、横島が無茶振りをされるなどとにかく賑やかなパーティーは夜遅くまで続いていった。


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