平和な日常~夏~

さてそんな賑やかなこの日も夜になると、店内の女子中高生は木乃香と明日菜だけになっていた

すっかり静かになった店内では数人の近所の住人や仕事終わりの社会人が酒や食事をしてる

他の少女達は夕食の前に帰ったのだが、木乃香が細々とした手伝いをしていたので残っており寮が同室の明日菜も一緒に残っていた


「二人とも一緒に飯食うだろ? 今から帰って夕飯の準備も大変だろうしな」

散々騒いでいたが疲れた様子もない横島は、自分達の夕食のついでに木乃香達の分も作っていたようである

最近では流石の横島も女子中高生の客の前では露骨に木乃香達を特別扱いしてないが、客が居ない時間になると相変わらず適当な理由でご馳走したりもしていた

まあ木乃香達はその分も日頃忙しい時間に店を手伝っており、常連の客なんかは木乃香のみならず明日菜や夕映やのどかもたまに入るバイトだと思われていたりもする

そのため木乃香達への特別扱いは今のところ問題にはなってないが、流石に女子中高生が多い時間は問題になったら面倒なのでサービスはしてなかったのだ


「うん、お願いするわ」

一応木乃香達に食べるかどうか聞く横島だったが、すでに作ってしまってから聞くだけに返事はあってないようなものだった

帰って食べる場合でもおかずを持たせてあげるなどは、割とよくあることである

結局そのまま横島とタマモと木乃香と明日菜は夕食にするが、先程まで騒いでいた影響からかこの日の夕食は少し静かだった


「そういえばみんながさ、来年の麻帆良祭もよかったら横島さんと一緒にやりたいって言ってるのよね」

「もう来年の話してるのか?」

ゆっくりと夕食を食べながらだがやっと落ち着いて話せる状況になったことから、明日菜と木乃香は顔を見合わせて来年の麻帆良祭の話を始める

2-Aのクラスメートの中には何がなんでも横島を確保したいと考える者も僅かに居るが、木乃香や明日菜はそこまで強制はしたくない

二人は麻帆良祭で総合一位を取った影響から、横島があまり表沙汰にしたくないメニューの功績がバレる可能性も高いことなどを説明して、よかったら来年も一緒にやりたいと告げていた

ただこの件に関しては横島にとってビジネスチャンスでもあることから、木乃香と明日菜のみならず夕映やあやかも事情を話しよかったらお願いする程度にしようと先程決めたらしい


「わたしもいっしょにやりたい」

先程までの騒がしい空気と一変した真面目な空気の中で木乃香と明日菜は説明していくが、横島よりも先にタマモが一緒にやりたいと瞳を輝かせる

先程まで散々写真を見ていただけに、自分も一緒にやりたいと思っていたようだ


「それじゃ来年も一緒でいいよ。 タマモも楽しみにしてるしな」

来年も2-Aと一緒にやるメリットとデメリットを説明していた途中だったのだが、横島はタマモの意見に乗っかって深く考えないで返事をしてしまう


「メリットとデメリットがいろいろあるんよ。 ええの?」

「もっと条件のいい話とか来るかもしれないのよ?」

相変わらず深く考えないで返事をする横島に、木乃香と明日菜は若干不安げに再確認するが横島は自分で考えずにタマモにどうすると聞いていた


「いっしょがいい」

「だってさ」

結局タマモの意見がそのまま横島の意見になってる状況に木乃香と明日菜は深いため息をはく

その結果二人は正式な約束と言うよりは予約という形で話を決めるしか出来なかった


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