夕方の店内は相変わらず女子中高生で賑やかだった

しかもこの日は客として来る女子中高生の多くが木乃香との写真を話題に出しひやかすのだから、横島をひやかそうと考えた者がいかに多いかという結果に表れている

中には付き合ってるのかと真顔で聞いて来る者も少なくなく、ひやかしと合わせて最早収集がつかない状況だった

あまりにみんなが同じことを言うので途中で横島は半ばヤケクソのように騒いでいたが、それもまた少女達の新たなネタになるようで店内は喫茶店とは思えないほど賑やかな時間が続いていく

というか店主が女子中高生にからかわれて一緒になって騒ぐ喫茶店は、他ではお目にかかれないだろう

加えて木乃香が横島の口を拭いてる写真を見たタマモが、人は口を拭いてあげると喜ぶと勘違いをしたらしくナプキンを手に持ち誰かの口を拭いてあげようと待っていた事も騒ぎが大きくなる一因だった

タマモ自身はもちろん全く悪気はないが、写真の横島が嬉しそうな表情をしていた事から勘違いしたらしい

きちんと空気を読めるタマモもまだ幼い子であり、人の常識を知らないだけに時々勘違いをするようだ

ちなみにそんなタマモにわざと口を拭いて貰おうと行動したのが美砂と桜子の二人だった

彼女達はちょっぴりだけ口元を汚すと、タマモが待ってましたと言わんばかりに嬉しそうに駆け寄り口を拭いてあげるのだ

そんなタマモの健気な行動に店内の女子中高生達からの評価が急上昇するが、横島は逆に恥ずかしさが倍増するというカオスな状況になる

まあ結果的に店が繁盛してることには変わりはないのだが……


「こうしてみると高校生か、下手すると中学生にしか見えないのよね」

「まあ、人の好みはそれぞれですから」

一方横島が他の客達と騒ぐのを割と冷静に見ていた明日菜と夕映は本当にあんな扱いでいいのか少し疑問を感じるが、そもそもきちんとした大人として扱われるのが好きじゃない横島を知るだけに何とも言えない気持ちになるようだ

特に横島のあまり目立たない有能さをよく知る彼女達としては、もう少しいい扱いをされてもいいのではと考えてしまうらしい


「そういえば来年の話しなくていいの？」

「流石にそれは図々しい過ぎる気が……」

横島が忙しいのでバカレンジャー組に勉強を教えてるのはのどか・あやか・千鶴の三人だった

店内が混雑してるので木乃香はいつの間にかカウンターの中に行き手伝いを始めており、横島と一緒にからかわれてる立場だったのだ

そんなバカレンジャー達の勉強組が話してる来年のこととは、それは来年の麻帆良祭の話である

実は２－Ａのクラスでは来年に向けて、とりあえず横島を確保した方がいいとの話が持ち上がっているのだ

今年の麻帆良祭の躍進の原動力である横島・超・あやかの三人さえ居れば、来年もなんとかなると考えてる者が多い

それに２－Ａの出し物が注目を集めてる現状では、メニューを考えた横島の存在がバレるのは時間の問題だった

毎年総合上位の出し物は次の年に向けて研究と対策をとられるのが普通なのである

そんな訳で木乃香達やあやかなどは、横島の確保をクラスメートから頼まれていた