平和な日常~夏~

同じ頃、中等部2-Aの教室ではちょっとした騒ぎになっていた


「うわ~、私たちの写真がいっぱい」

実はこの日は今年の麻帆良祭の公式ブックが完成しクラスに一冊ずつ配られていたのだが、今年の麻帆良祭の出し物で総合一位であり中等部の歴代最高得票数を記録した2-Aのファンタジーレストランは四ページを使った特集が組まれている

仮設店舗や内装の写真や2-Aのみんなが働く姿などがイキイキと写った写真と共に、メニューや立体映像の解説などがされていた

公式ブックは総ページ数が四百ページほどあり大きさもファッション雑誌くらいとかなりの量ではあるが、それでも一つの出し物に四ページは異例の扱いである


「写真って言えば木乃香とマスターの写真も目立つ場所にあるわよ」

自分達の写真や特集を食い入るように見ていた2-Aの少女達だったが、意味深な笑みを浮かべた朝倉は木乃香と横島の写真があると言うと表紙から一ページずつ見ていくように告げていた

本の真ん前に座りページを開いていたのは何故か裕奈であり彼女は慌てて表紙から一ページずつ開いていくが……


「木乃香スゲー!」

なんと横島と木乃香の写真は目次前に二十ページ近く掲載されてる麻帆良祭の写真の数々の一つとして、一ページ丸々使って大きな写真が掲載されていた

しかも掲載ページは七ページ目であり、麻帆良祭写真コンクールのグランプリ作品として掲載されてるのだ

それはまさしく奇跡の一瞬と言ってもいいほどの一枚である

無邪気な表情で楽しそうな横島の口元を拭く、年下の木乃香の笑顔が見事に写っているのだから

この一瞬を逃さずにカメラに収めたカメラマンの腕前がよく分かる一枚だった

今年の麻帆良祭のミス麻帆良よりも掲載ページは早く、正直ミス麻帆良よりも木乃香の方が可愛く見えるのは気のせいではないかもしれない


「流石に恥ずかしいわ~」

今年の麻帆良祭でクラスで一番目立ったのは間違いなく木乃香であり、実は木乃香と横島は以前麻帆良祭後にこの写真の公式ブックへの掲載を事前に知らせる連絡を受けていた

写真を撮ったカメラマンからもお礼の礼状が届いており、横島と木乃香は特に写真の掲載に反対などしなかったのだ

最も二人は公式ブックに掲載されるとは聞いたが、これほど目立つ場所に載るなど考えもしなかったのだが……


「大学部の人達悔しがってたわよ。 まさか中等部に総合一位をとられるなんて前代未聞だし」

そんな訳で個人でかなり目立っている木乃香だったが、2-Aのクラスの注目度も負けないくらい高かった

大学部には麻帆良祭に情熱を賭けて、一年がかりで準備してるサークルや団体も少なくない

まさか彼らもノーマークの中等部にランキング総合一位をとられるとは予想もしてなかったようだ

そんな人達は早くも来年に向けて動き出してるらしく、打倒2-Aを掲げる者も居るとか居ないとか……

特に2-Aには大学部で有名な天才超鈴音が居ることから、大学部の人達はまぐれではないと考える者が多いらしく来年はマークされそうだった



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