平和な日常~夏~

その後勉強を始める夕映達だが、正直夕映以外はあまり集中力が続かなかった


「ここで勉強するとお腹が空くネ。 これは罠アルカ?」

「今日しか食べれないと思うとつい食べちゃうんだよね~」

特に古菲とまき絵は店内に置かれてる今日の日替わりメニューのパンが気になるらしく、休憩と言ってはパンを食べてしまう

店内に居るとどうしてもパンのいい匂いがしてくるため、勉強よりもそちらが気になってしまうらしい


「ここをこうすると橋になるんよ」

一方横島が勉強を教えるのに忙しく一人暇そうにしてたタマモは、何故か木乃香にあやとりを教わっていた

どうも賑やかに勉強する明日菜達をちょっと羨ましそうに見てるのを木乃香が気付いたらしい

恐らくタマモは勉強を理解してないが、一緒に何かしてる姿は楽しそうに見えたのだろう

そんなタマモに一人勉強をしてない木乃香が適当な紐を見つけて、あやとりを教え始めたようだ

今時あやとりが出来るのは珍しいが、元々京都の山奥の屋敷から出してもらえなかった木乃香はいろいろ古い遊びを知ってるらしい

木乃香が次々に何かの形を作ると、タマモは嬉しそうにパチパチと拍手をしている


「子供はいいわね……。 代わってくれないかしら?」

楽しそうな木乃香とタマモの姿に相変わらず勉強に苦労している明日菜は、思わず立場を代わってほしいと愚痴をこぼしてしまう

まあ明日菜としてはなかなか勉強が進まずに愚痴でもこぼさないとやってられないのだろうが、そんな明日菜の言葉にタマモが反応した


「わたし、かわってくる」

「タマちゃん?」

明日菜の言葉を真に受けたタマモは自分が代わると木乃香に告げると、明日菜の元に行き勉強を代わろうと見上げていた


「えっ……、あのゴメン。 これは私がやらないとダメなのよ。 ありがとうね」

「優しいなー でもタマちゃんにはまだ早いんよ。 あっちで続きしよな」

全く考えもなしに呟いた愚痴に、本気で代わろうてしたタマモに明日菜は若干戸惑いながらもお礼を言う

まさかそんな反応するとは思わなかったようだし、純粋に心配するようなタマモの視線が痛かったらしい

基本的に子供が苦手であり木乃香や夕映達に比べると正直タマモと関わりが少ないだけに、今回の反応には戸惑ったようだ

結局明日菜と木乃香の言葉から自分には出来ないと感じたタマモは、素直に元の席に戻り木乃香とあやとりを再開する


「賢いでござるな」

「あんな小さな子供に心配されたアル」

「私負けそう……」

「自分がちょっと情けなくなるわ」

突然のタマモの行動には横島も含めて勉強していたメンバーが驚き固まっていた

特に集中力が続かなかった楓・古菲・まき絵の三人と愚痴をこぼした明日菜は、自分達の情けない現状にちょっと考えさせられるものがあったようだ

なかなか集中出来なかった彼女達は、奇しくもタマモの行動を境に勉強に集中していく

ちなみに、夕映とのどかの二人だけはきっちり集中して勉強していた

やはり夕映は頭が悪いのではなく勉強が嫌いなだけなようである



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