平和な日常~夏~

一方その日の営業をいつもより少し早めに終えた横島は、二階の住居部分の整理に取り掛かろうとしていた

明日菜や夕映達に家電を貰い茶々丸にソファやテーブルを貰った横島宅だったが、相変わらずテレビは床に置かれているしキッチンも電子レンジが床に置かれたままである

横島自身はあまり気にしないので今まで手を付けてなかったのだが、同居人も増えたことからいい加減きちんとした家具を揃えることに決めたらしい


「買いに行くか……」

家具を揃えると言っても横島には二通りの方法がある

一つは異空間アジトに保管している家具を持ち込む方法であり、一つは普通に店に買いに行く方法だ

一番簡単なのは土偶羅に頼んで適当な家具を見繕って送ってもらうことなのだが、問題は異空間アジトに保管されてる家具はほとんどが高級品ばっかりなことだろう

基本的に異空間アジトにある元の世界から持ち込んだ物資は横島は関与してなく、アシュタロスやかつての仲間達が持ち込んだ物なのだ

家具などは未使用品もかなりあるが、ほとんどは雪広家にあるような芸術品のような最高級家具ばかりなのである

未使用の家具のほとんどは神魔戦争直前に現金や不動産を金塊や物資に変えた際に高騰した金や宝石の代わりに買った物であり、はっきり言って横島には使いにくいし高級過ぎて落ち着かなかった

結局横島はさよとタマモを連れて、麻帆良の郊外にある大型家具屋に買いに行くことにしていた



「うわ~、広いお店ですね~ コンビニよりも全然広いですよ」

家具屋に到着するなりその大きさに驚くさよだが、彼女は基本的に学校近くのコンビニやファミレスしか行ったことがないらしい

まあ元々この家具屋は麻帆良を包む結界の外にあって、さよは一人では来れない場所にあるのだが……

ちなみにさよは自身の行動を阻む結界を抜けたことをまだ気付いてない

横島も一々結界を抜けたことを言わないため、彼女は自分のことを忘れてるようである


「とりあえず最低限の家具は揃えなきゃな。 タマモとさよちゃんで選んでくれ」

大きな店に驚くさよとタマモは半ば観光のようにキョロキョロしながら歩いていくが、たくさんの家具に何を買えばいいか分からないようであった

とりあえずテレビ台を買う為にリビングなどの家具のフロアに向かうが、あまりの家具の種類に逆に何がいいか分からなくなってしまう


「なんか欲しい物あれば言ってくれよ。 さよちゃんには個室を用意しようと思ってるからな。 タマモも自分の部屋欲しいか?」

「ううん、いらない」

なかなか決まらずにあれこれと話をしながら家具を選ぶ横島達だが、さよは自分の部屋がどちらかと言えば欲しいようだがタマモは欲しくないらしい

だいぶ落ち着いたタマモだが、やはり一人になりたくないとの思いはあるようだった


「私と一緒に個室を使わない? 私も幽霊だから個室あまり意味ないし」

「……うん、いっしょがいい」

そのまま時間をかけながら家具を選ぶさよとタマモだが、二人は何故か一緒に個室を使うことで話を進めていく

基本的にさよもタマモも、わざわざ一人になりたいとは思わないのかもしれない

さよも個室を貰えるなら貰っておこうという程度の認識でしかなく、タマモに至っては個室の意味を理解してない

どちやかと言えば自分達の秘密基地を作る子供の心境に似てるようだった

最終的に横島達はリビングやキッチンに置く家具と、横島とタマモの衣服を入れる家具にさよとタマモの個室に置くテーブルやソファーなでを、閉店ぎりぎりまで選んで買うことになった



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