平和な日常~夏~

その後横島は山かけリストを作っていくが、店内は相変わらず賑やかだった

途中噂を聞き付けたまき絵・裕奈など、数人の他の2-Aの少女達も合流したため余計に賑やかになったのだ

まあ麻帆良祭後は特に放課後から夕方は、女子中高生のたまり場になりつつあるので今更ではあるが……



「マスター、見かけによらずに頭いいのね」

「ねえ、ここ分かる?」

そんな風にテスト直前とは言わないがテスト前の微妙な時期に明日菜やのどかに店内で勉強を教えていると、当然それは他の客にも見られてるということである

横島の見た目から勉強を教えてる姿に驚く者もいるが人は見かけによらないと言うし、頭がいいなら解らない問題を聞きたいと考える者も出始めていた

中間テストの時は正直そこまで親しくなかった者達も、麻帆良祭などで親しくなれば頼みやすくなったのだろう

流石にがっつりと教えてほしいと言う者は居ないが、解らない問題を尋ねる者が現れだしていた


「ああ、そこはさ……」

頼まれれば嫌だと言えない横島は、そのまま聞かれた問題を答えて教えるしか道はない

店内が無駄に広いこともあり、その結果店で勉強する女の子が少しずつ増えて行く


「こんにち……?」

そんな時店にやって来たのは夕映と木乃香だった

二人が見たのは十人前後の勉強する女子中高生と、仕事そっちのけで彼女達のテーブルを周り解らない問題を教えている横島の姿である


「何があったのですか?」

「マスター予想以上に頭いいから、教えてほしいって人増えちゃったのよ。 本当にお人よしよね」

なんとなく事情を悟った夕映と木乃香だが、確認の為にタマモと遊んでいた美砂達のテーブルに行き事情を尋ねていく

その結果が予想通りだったらしく、説明した美砂達を含め集まっていた2ーAの少女達は同じように微妙な笑顔を見せていた


「……私のせい?」

「違います。 横島さんは、ああいう人なのですよ」

そんな微妙な笑顔のクラスメートに横島の余計な仕事を増やした原因は自分だと感じた明日菜とのどかは申し訳なさそうな表情をするが、それは夕映の言葉により否定される

以前から薄々は感じていたが、横島は誰かに頼られるのが好きなのだろうと夕映と木乃香は気付いていた
しかもそれは人の為に奉仕するとかではなく、横島自身がそういう環境が好きなだけだという変わった性格なのもなんとなく気付いている

ただ二人はそんな横島の性格の裏には、何か理由がありそうだとも感じてはいたが……


「すいません、紅茶お代わりお願いします」

「あっ、うちがやるからええよ」

勉強の指導に店の仕事にと一人忙しそうに動く横島を見兼ねて、木乃香がカウンターに入り臨時に手伝いを始める


「バイトじゃない日なのにごめんな」

「うちは、全然ええよ」

流石に手が回らなくなり始めてた頃に木乃香が手伝いを始めた為に、横島は素直にお礼をいい喫茶店の仕事を任せることにしていた

麻帆良祭の経験からか最近ますます仕事に慣れて来た木乃香は、日替わりメニューさえ無ければ日中は一人で営業するだけの力量が備わりつつあった

55/90ページ
スキ