平和な日常~夏~

一方異空間アジトの南極では魔法世界の環境を再現した実験空間において、空中船を代表する各種兵器の実験が始まっていた

実験空間は元々はアシュタロスが逆天号などの対神魔兵鬼の武装を開発するのに実験にも使った特殊空間であり、他とは完全に隔離された閉鎖空間な為にかなり便利な空間である

環境設定を一部変更するなどして臨時の魔法世界用の実験空間に改良していたのだ

通常この手の兵器開発は計画から開発運用までは長い年月を必要とするが、残念ながら魔法世界にはそれほど時間がないのを土偶羅は見越しており計画をかなり急いでいた

まあ異空間アジトの場合は予算も資源も人手も無限に等しく存在するので無謀な訳ではないが……


そして現在は幾つかの船舶用ドックにおいて、すでに臨時の空中船を建造している

最も空中船とは言うものの、見た目以外は魔法世界の空中船とは全くの別物だった

中身はすでに技術的に確立してるカオスフライヤーの応用で即席の空中船を建造していたのだ

実は異空間アジトにはカオスが晩年に開発した二十一世紀型のカオスフライヤーが十数種類存在するが、それらは全て小型であり見た目や大きさの問題があった

兵器としての質は後期型のカオスフライヤーであれば圧倒的であり魔法世界の空中船では勝負にもならないが、その性能ゆえ機密の固まりでありおいそれと使える機体でない


ここで魔法世界の空中船について少し説明するが、魔法世界では古くから対物障壁・対魔障壁が存在した為に空中艦などの兵器は防御障壁と攻撃兵器の技術向上を優先的にしてきた歴史がある

そしてそれらの技術向上には莫大なエネルギーを生み出す機関や設備が必要になり、兵器全体が巨大化してきた過去があるのだ

結局のところ防御障壁が向上すればそれに合わせて攻撃兵器も向上していくし、そのまた逆も多くある

全体の小型化も近年は多少進んでいるが、それよりは威力や性能の向上に重点を置かれた結果であった


そんな訳で巨大な空中船が多い魔法世界の兵器だが、土偶羅としては建造する全ての空中船の中身まで魔法世界の技術で合わせる必要性は必ずしも存在しない

一応魔法世界の技術でも空中船を建造はするが、主力艦は別でありカオスフライヤーのシステムを利用した空中船はすでに建造している

ちなみにこのカオスフライヤーのシステムについては、神魔戦争初期の人界の最先端科学と異空間アジトに残されたアシュタロスの遺産の技術を融合させたトンデモ兵器だったりする

二十一世紀型カオスフライヤーは既存の戦闘機を基本とし流用した三号機から始まり、アシュタロスの技術を流用した後期型まで複数存在した

当時アシュタロスの技術をルシオラから継承して唯一理解していた横島をカオスが無理矢理助手として開発したのだが、結果としてドクターカオスから横島が学んだことも多かったという皮肉な結末が残っていた

他人からの借り物の知識や技術を自らのモノとしより高みへ努力するという、受け継いだ魂の真の活用の仕方はカオスから学んだことが非常に多かったのだ

そんな訳で少し話は逸れたが、万が一の時の為の準備は着々と進んでいく



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