平和な日常~夏~

そのまま会議は始まるが、内容はすでに進行している商品とメニューの開発状況の報告と試作品の試食会だった

取り分け麻帆良カレーと名付けた横島開発のカレーと超包子のメニュー数品は、レトルト化を目指して開発が進んでるらしい

そんな中で超から貰った中華まんに続き試作品の試食が次々に出て来るので、タマモはご飯を食べに来たのかと若干誤解を始めてしまう

しかも大人しくしてるのに周りの大人の注目が集まるため、本人は何か間違ってるのかと横島にチラチラと視線を送る


「食べていいんだぞ。 味の感想が欲しいそうだ。 辛いとか甘いとか美味しいとか美味しくないとか……」

イマイチ自分の立場を理解してないタマモは迷惑をかけないように大人しく座っているのだが、横島の言葉により出された試食を食べ始めた

割と表情に乏しいタマモたが目の前の試食を食べると笑顔に変わり、タマモの反応を見ていた開発者達はホッとした表情になる

ある意味言葉よりも分かりやすい表情がよかっただけに、ホッとしたのだろう

そのままタマモに続き大人達も試食に入るが、こちらは具体的な感想を次々に口にしていく

基本的にはすでに完成してるメニューなだけに、問題はいかにそれを再現し商品化やメニュー化するかなのだが早々簡単でもない

まず問題になっていたのがカレーの具であった

麻帆良祭では横島が種類を多く用意して好みで選ぶトッピングのようにしていたが、レトルト化するならば幾つか選ぶ必要がある

その他には系列のファミレスでのメニュー化なども検討されており、カレーのルーをある程度大量生産する必要があるのだ

今回はその試作品もあったのだが……


「開発者の横島シェフ、ご意見をお願いします」

社員達が次々に感想を述べるが、意見は好評とイマイチが半々くらいであった

はっきり言うと麻帆良祭に比べて味が落ちてるのだ

ファミレスやレストラン用のメニューはまだいいが、レトルトは明らかに物足りなさがある


「えっと、このままじゃダメでしょうね。 スパイスはまあいいですけど、煮込む際の火加減とかいろいろ問題があります」

何故かシェフにされた横島は一瞬否定しようかと悩むが、会議室はそんな空気ではない

結局素直に感想を言うが横島だが、予想以上に細かな問題点が多かった

横島としてはメニューを渡す際に細かな煮込む火加減や時間など書いて渡したが、微妙なさじ加減が難しいらしく本来の美味しさがまだ出てないらしい

加えて一応基本のメニューは渡したが、ルーを作る際に使用するスパイスや野菜や肉などの素材産地の違いなどにより変わる味を調整するのもなかなか難しいものがあるのだ

極端な話をすると塩一つとっても産地や生産者により味が違うし、横島の作るメニューは横島が思った以上に繊細だった

まあ決して試作品がまずい訳ではなく美味しいのだが、正直麻帆良祭のメニューを食べた者を満足させるレベルではない




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