平和な日常~夏~

一方地球側の魔法協会がそれぞれに頭を悩ませる中、当事者のメルディアナもまた事態に頭を悩ませていた

そもそもネギの卒業に関する問題は、学校長であるスプリングフィールド校長が一人で行った行動である

メルディアナに在籍する魔法関係者達の大半は、身に覚えのない事態に巻き込まれただけであった

しかもこのメルディアナはメセンブリーナ連合の首都であるメガロメセンブリアと地球を繋ぐ要所のため、メガロメセンブリアの影響力が強い魔法協会なのである

メルディアナ魔法協会の会長はスプリングフィールド魔法学校校長が兼任しているが、幹部の半数はメガロから出向してきた者だった

かつてはメガロ元老院と地球側の列強国家との交渉の仲介役を勤めたほど歴史と伝統はあるが、戦略上の要所である為か幾度も権力争いが起こるなど決して平和な魔法協会ではない

まあ近年はジョンソン魔法協会に地球側との仲介役を取らるなど衰退の一途をたどっているが……

その結果現在メルディアナが行ってるのは地球側ゲートの管理と防衛程度であり、他の魔法協会と比べると規模がかなり小さい


さてそんなメルディアナにとって、ネギの問題で各国魔法協会から怨まれるのは迷惑以外の何物でもない

スプリングフィールド学校長は事態の鎮静化を計るもすでに時は遅く、彼は孫がいかに魔法関係者に敬遠されてるか嫌というほど想い知らされる結果となっていた


「校長、本日の会議で貴方の勇退が決定しました。 長い間お疲れ様でした」

そしてこの日メルディアナ魔法協会は、スプリングフィールド魔法学校長が全ての要職から勇退することを本人抜きに決定していた

地球側魔法協会からの予想以上の圧力に加え、問題を悪化させたはずのメガロ元老院の穏健派もまたこれ以上の対立を望まず学校長に責任を取るように求めたのだ

魔法協会とメガロメセンブリアの対立があまり激しくなると地球側国家の介入の恐れもあり、交渉とは別に一定の責任を取りある程度事態を収める必要があったのである


「ネギのことはどうなった?」

「卒業後は校長の元で学ぶべきだとの結論です」

会議の結果を報告する者の表情も決して明るくはなく、残念だと言わんばかりの表情だった

年齢も高齢であり立派な魔法使いとして実績もある学校長なだけに名誉を傷つけぬように勇退という形になったが、事実上の失脚なのは誰の目から見ても明らかである

学校長の子供や孫であるナギやネギには長年悩まされてきたメルディアナだが、それでも学校長がメルディアナに残した功績もまた大きい

メガロに近く難しい場所であるメルディアナを学校長は長年上手く運営して来たのだ

その手腕は誰もが認めており、今回の勇退も惜しまれる声が上がったほどだった

目の前で報告する幹部も学校長が去った後を考えると決して喜ばしいことではなく、残念の一言に尽きるのだろう


「そうか……、ありがとう」

ネギに関して自分に任せることを決めた幹部に、学校長はホッとしたように礼を口にする


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