平和な日常~夏~

その後、報告が終わると再びパーティーが再開される

その際カラオケだけでなくビリヤードやダーツや本格的なスクリーンでの映画など、雪広邸の別の部屋にある遊戯施設も解放されてそれぞれに好きな場所に移動していく


そんな中で横島はあやかに少し話があると言われ応接室に移動していた

部屋にはあやかの他に超・木乃香・夕映の三人も一緒に来ており、微妙な空気が横島を取り巻いている


「話と言うのは先程の業務提携に絡むことです。 単刀直入にお願いしますが、協力して頂けないでしょうか?」

落ち着かないほど座り心地がいいソファに横島が驚く中、あやかは何の前置きもなくそのまま話を切り出していた

この件に関しては夕映と超がもてなした後に素直に頼むべきだと主張したことから、そのままシンプルに頼むことにしたらしい

業務提携の発表を先行させたのも夕映や木乃香の意見からであり、横島自身があまり表に出たがらないことからの判断だった


「いいよ。 話が来るかとは思ってたしな。 あんまり目立って忙しくなるなら断るが、裏方でいいなら協力するよ」

若干不安げに横島の顔を見つめるあやかだったが、横島自身は悩む間もなく返事をしてあっさりと話が決まってしまう

期間中から麻帆良祭後は丸投げして関わらないと予防線を張っていただけに、あやかと超は少し驚きの表情である

ただ木乃香と夕映はある程度この流れが読めていたようで驚きはないが


「本当によろしいのですか? では条件などの話を……」

「細かいとこはあやかちゃんに任せるよ」

あまりにもアッサリとした流れに多少戸惑うあやかだが、気を取り直して話を進める

しかし横島は相変わらずの調子であやかに丸投げしてしまう


「任せると言われましても……」

「どのみちもうプロジェクトは始まってるんだろ。 そっちの都合に合わせていいよ。 ただ俺の名前で出すのは勘弁してくれ」

結局話し合いにもならない交渉は、僅かに数分で終わっていた

実は横島は今日この話があることを土偶羅からの情報で事前に知っている

加えて雪広家とはいい関係を続けてほしいという、土偶羅からの要望も来ていた

土偶羅は横島の意思に基づいて人間界に拠点や工作会社を作っているが、将来的には麻帆良派と言われる雪広や那波に接近したいとの思惑も持っている

どのみち現在の麻帆良を支援し穏便に守るには、現体制に協力する道を選ぶ必要があった

その中の一つの方法として麻帆良学園の支援企業に加わる計画もあるらしい

最も横島は元々頼まれれば断るつもりはなかったが……

横島自身が中心となりプロジェクトを進めるならともかく、側面的な協力ならば当初から予想していたことなのだ

仮に雪広側が多少なりとも傲慢な態度だったならば話は変わるかもしれないが、麻帆良祭から今日のパーティーまで雪広側は大企業にも関わらず終始低姿勢だった

実際はあやかの存在が大きいのは当然理解してるが、礼儀を尽くした相手に答える程度の常識は横島にもあったようである



20/90ページ
スキ