平和な日常~夏~

さて今日の本命である打ち上げパーティーだが、こちらもまたスケールが違う世界だった

会場となる部屋には数々の豪華な料理が並び、中でも一際目を引くのが著名な料理人や寿司職人が居ることで、目の前で直接料理を作るらしい


「早いもの勝ちだね!」

「うわっ、お寿司にお肉に何でもあるよ!」

案内されて会場内に入った少女の誰かが料理を見て早い者勝ちだと叫ぶと、2-Aの彼女達は競うように我先にと料理に突っ張る

同じくあやかに招待された超包子やお料理研究会の面々は流石にそこまで我を忘れないが、それでも彼女達も圧倒されてる側なことは変わらない


「金持ちって奴は限度ってものを知らんのか? 流石にやり過ぎだと思うぞ」

「こうして見ると横島さんはこちら側の人間なのですね。 まあ雪広家と比べれば誰もが庶民と同じでしょうが」

あまりに豪華な料理の数々に横島もまた驚きやり過ぎだと表情を強張らせるが、そんな横島の姿を見て夕映は思ってたよりは庶民的なのだと感じていた

今まではどちらかと言えば横島がやり過ぎる側だったが、流石に雪広家はスケールが違い横島のやり過ぎ程度では霞んでしまう

まあ横島の生い立ちや過去に謎や疑問が多いのは夕映が一番感じてるが、一時期噂になった大金持ちの息子という説は違うのだろうと思ったようだ

貧乏には見えないが今日の驚き方を見ていると、雪広家のような大金持ちとは違うのは明らかだった



「料理はまだまだありますから、早い者勝ちではありませんよ!!」

まるでバーゲンセールのように走るクラスメートに、あやかは若干困ったように早い者勝ちではないと言うが勢いがついた少女達は止まらない

会場内には今回のプロジェクトに参加した雪広グループ側の人間も招待されており、ガチガチに緊張する彼らと思いっきり楽しむ少女達との空気の違いは凄まじかった

そのまま普段は気品あるパーティーに使われる部屋が、一気に中学生のテンションとノリに包まれるのだから2-Aの少女達の勢いの凄さを大人達は感じてしまう


「凄い美味しい!」

「でもこうして本当に美味しい物を食べると、あの人が普通じゃないのがよく分かるわよね」

一生に一度のごちそうかもしれないと高級料理を頬張る少女達だが、その味は決して期待を裏切ることがないほど素晴らしい

しかし同時に感じるのは、身近に同じレベルの味を普通に出す人間が居ることだろう

何か他の人の料理とはひと味違うと感じていた横島の料理が、雪広家で出す料理と近いレベルだと知ると少女達の中には横島が実は著名な料理人の息子ではとの憶測が口にする者が現れる


「料理人の息子かな?」

「厳し過ぎて家を飛び出したとか?」

金持ち説が若干現実味が無くなると今度は親が料理人説を口にする少女達だが、そのイメージが某グルメ漫画の親子なのだから半ば冗談半分のネタだった


(俺の親父はあんな頑固じゃねえよ)

一方新たな噂で笑っている少女達に横島は、自分の父親と某グルメ漫画の頑固親父と比べて思わず笑ってしまったのは性格があまりに違い過ぎるためだろう

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