横島君のお店開店

「……」

横島が一般人でないと気付いたエヴァだが、それ以上興味はなく料理を食べ始める

京風の味付けの和食にエヴァは僅かに驚きの表情を浮かべつつ食べていく

麻帆良では味わえないような本格的なその味に、エヴァは無言のまま完食していた


「これもメニューに入ってるのか?」

始めてエヴァが口を開いたのは、食事を終えたエヴァに横島が日本茶と大福を持って来た時だった


「いんや、サービスだよ。 そっちのお嬢さんにもな」

エヴァに続き茶々丸にも日本茶と大福をサービスする横島だったが、食べ物を食べれない茶々丸は少し困った表情をする

横島はそれ以上何も言わないでカウンターに戻るが、エヴァと茶々丸はしばし横島を見つめていた



「マスター、お味はいかがでしたか?」

「美味かった。 超鈴音達が噂をするだけの事はある。 しかし何か妙な男だ。 お前の正体に気付いて食べ物を出した馬鹿は初めてだな」

お茶と二人分の大福を完食したエヴァは、あれ以上何も話す事はないまま店を出ていたが少しだけ横島に興味を持つ

何故喫茶店で京風の和食を出すのか理解出来なかったし、加えて茶々丸が人間でない事に気付いた横島が茶々丸にサービスの大福を出した事にも驚いている

麻帆良は結界の影響で茶々丸がガイノイドだと気付かない者もいるが、大抵は気付いても気にしないのだ

しかしある程度力のある裏の人間にはあの結界の効果が効かないため、横島が茶々丸の正体に気付いていた事をエヴァは確信している

それでもなお茶々丸にも大福をサービスした理由がエヴァにはわからない


「先程のメニューはサービスを抜いても、明らかに原価割れでした」

「おかしな男だな」

エヴァも茶々丸も横島がどこか変なのは少し気になるが、ただそれだけだった

エヴァはまたおかしな人間が現れたかと考え帰っていく



「今日は本格和食ですか。 本当に経営は大丈夫ですか? 突然夜逃げとかは止めてほしいです」

一方店の方にはエヴァ達と入れ違いに夕映とのどかが訪れている

自分で作るよりも外食よりも安い事から最近は昼食に限定メニューを食べている二人だが、夕映はやはり不安を感じてるらしい


「大丈夫だって。 今日は大福をサービス中だ。 筍ご飯ならお代わりしていいぞ。 のどかちゃんもたくさん食えよ」

心配する夕映に対して相変わらず横島は笑って済ませてしまう

確かに当初の夕映の考えよりは客が多いが、他店より安いメニューに激安の限定メニューを考えれば赤字のような気がしてならなかった


「ありがとうございます」

「なんか食いたい物あれば言ってくれよ。 明日のメニューまだ決まってないからさ」

心配しながら店の収支を考えてる夕映の隣では、のどかが顔を赤らめながらも横島と会話をしている

のどかは男性が苦手で自分からは話し掛けられないが、そんな事を全く気にしない横島が話し掛けると小声で答えるくらいにはなっていた

横島と夕映がよく話をするだけに、少し横島に慣れて返事くらいはできるようになったらしい


(ここに来ると落ち着くのですよね)

開店以来、夕映は木乃香に次いで店に居る時間が長かった

客の大半が若い女の子な為に賑やかで騒がしい時もあるが、横島は長居しても嫌な顔一つしないので夕映は読書をしたりしながら長い時間居ることも多かったののである

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