麻帆良祭

一方の少女達はようやく全てが終わった解放感からテンションを上げて騒いでいた

苦労も多かったが終わってみると、今まで感じたことがないほどの達成感や開放感に包まれていたのだ

時間的にはすでに麻帆良祭関連イベントや出し物もほぼ全てが終了しており、麻帆良全体で後夜祭が始まっている


(魔力が高まってるな)

そんな麻帆良の賑わいを感じていた横島は、いつの間にか麻帆良全体で魔力が高まってる事実に気付く

いつからか街の中心にある世界樹はほんのりと淡い光を放ち、二十二年に一度の大発光ほどではないが一般人にもなんとか見える程度には発光していたのだ


「………横島さん?」

一人世界樹を見つめていた横島を探しに来た木乃香は、またもや一瞬横島が別の誰かに見えてしまう

闇夜に淡い光を放つ世界樹と同じような光を放つ、見知らぬ女性が見えていた

それはほんの一瞬の出来事であり目の錯覚だろうと思うが、あまりに美しい姿に木乃香はその錯覚が記憶に深く残ることになる


「ん? どうした?」

「今な横島さんが女の人に見えたんよ。 ほっそりとしたショートの髪形の……」

ほんの一瞬が過ぎると横島は横島にしか見えなくいつもと同じ様子なのだが、木乃香が思わず女性に見えたことを語ると横島の瞳に僅かに動揺が走るが幸い木乃香はそれには気付くことは無かった

それが血筋の成せる技なのか高い潜在能力なのかは分からないが、木乃香はごくごく稀に横島の秘密の一端が見えてしまうようである


「女は酷くないか? 俺はそっちの趣味はないぞ」

まるで一瞬の動揺を隠すように悲しそうな振りをして抗議する横島に、木乃香はクスクスと笑ってしまい全ては流れていく

そのまま横島を探しに来た他の少女達に連れられて横島も打ち上げに参加するが、その後木乃香が同じモノを見ることは無かったようだ


さてそんな打ち上げだが、同じ敷地内で最後まで働いていた雪広グループ関係者や超包子のメンバーも交えた盛大な打ち上げになっていく

料理や飲み物は雪広グループ関係者が気を利かせて事前に用意してくれたらしく、最後は横島を含めて全員がただ自由に騒ぎ飲み食いするだけだった

高まった世界樹の魔力に横島は人では感じることの出来ない心地好さを感じつつ騒ぎに加わっていくのだが……


「うわ~、これ美味しい~」

「えっ!? どれどれ?」

「ちょっ……お前ら! それは俺の……」

打ち上げと称して最初は普通に騒ぎ楽しむ少女達だったが、途中で高まったテンションからどんどんはっちゃけて行ってしまう

誰がが間違って横島が飲んでたワインを飲んでしまうと、あっという間に数人の少女達にワインが飲まれてしまった


「いいのいいの、麻帆良祭は無礼講なんだから!」

「あつ~い!!」

「流石に酒はマズイって! そこ、服脱ぐな!! 誰か止めろ!」

結局横島がゆっくり楽しんでいたのは最初の少しだけであった

途中からはあれよあれよと少女達に振り回されてしまい、カオスな状況になっていく

そのまま麻帆良祭の夜は夜が明けるまで続いて行った



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