麻帆良祭

混雑する人の合間を縫うように移動した横島が仮設店舗に到着すると、店内は混んではいるが捌けないほどではない

しかし厨房では大量注文が複数舞い込んで収集が着かなくなっている

横島と同じく超もまた呼び戻されていたようで、一足先に到着した彼女はさっそく調理に取り掛かっていた


「最後の最後まで申し訳ありません。 本当はお断りしようとしたのですが……」

到着早々横島に事情を話すあやかだが、昼過ぎから後夜祭向けの大量注文が続々舞い込んだらしい

当初は大量注文は対応出来ないからと断っていたようだが、立体映像関係で協力してくれた工学部などからの注文は流石に断れなかったようだ

間に入ってる超と葉加瀬のことを考えると受けざるおえなかったのだろう


「それはいいけど材料は足りるんか?」

「はい、一部足りない食材は急遽輸送させてます」

申し訳なさ気に謝罪するあやかの言葉を途中で遮った横島は食材の在庫などを確認するが、やはり足りない食材があったらしく急遽輸送しているらしい

近隣の雪広グループ系列のレストランやショッピングセンターなどから輸送しているらしいが、一部はヘリを使用して運んでいたりする

麻帆良祭最終日の夕方は三日間でも一番混んでる時間帯であり、車では間に合わない為に近場の大学部のヘリポートを使用してヘリで運んでいるのだからその規模には横島も驚きを隠せない


「流石に三百人前の大量注文は計算しとらんわ」

「工学部の系列サークルの後夜祭での合同打ち上げに頼まれたようです」

注文表と在庫を確認する横島だが、大量注文の桁が一桁違うのだから予測を越えたのも無理は無かった

二人が確認している最中も雪広グループ関係者が食材を運び込んで来ており、確認次第調理に回されていく

最早学生の文化祭のレベルじゃないと誰もが思うが、今更止めようがないしツッコミを入れる時間もない

そのまま食材の件はあやかに任せた方がいいと考えた横島は早々に調理に回るが、厨房は時間に追われる少女達の緊張感に包まれていた


「全体イベントに参加したかと思ってたヨ」

「ちょっと悩んだけどな。 見てる方が面白そうだから見物しながら一杯やってたんだ」

最終日のこの時間は全体イベントへの参加者も結構居たようだ

超を始め少女達は横島が参加しなかったことに多少驚いているが、参加していなくてホッとしたのが本音であろう

そのまま麻帆良祭がフィナーレに向けて各地で盛り上がる中、仮設店舗の厨房では最後まで時間との戦いが続いていく



「終わったな……」

閉店時間も過ぎ大量注文を提供すると、ようやく仮設店舗は終了となる

途中心配して駆け付けた木乃香達や時間の空いていた者達が次々に加わり、最終的には総力戦のような形になるがなんとか間に合わせることに成功していた

横島がホッと一息つき外に出ると、すでに後夜祭が始まっており最後の一騒ぎを楽しむ声があちこちから響いてくる

そして同じ敷地内の雪広グループ関係者達も2-Aの店舗終了に伴い、こちらも業務終了と打ち上げに入ろうとしていた



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