麻帆良祭

「おっちゃん、これいくら?」

「ああ、それか。 紙が古くてメモ用紙にも出来んからな。 欲しいんなら持って行っていいぞ」

一方横島は特に何も言うことなく本を買うつもりで値段を尋ねるが、古本屋の親父は欲しいなら持って行っていいと興味がなさ気である


「じゃあ貰っていくよ」

「何か秘密でもありそうなのですか?」

横島が迷うことなく貰ったことで夕映は何か欲しい理由があるのかと尋ねるが、横島はなんとなく気になっただけだと言いそれ以上何も語らなかった

少し気になる夕映は後で見せて欲しいと言うとそれ以上尋ねることはないまま、自らも本を探しに夢中になっていく



「いや~、凄い混んでるな」

そのまま夕方まで古本市に居た横島達だが、麻帆良祭が初めての横島に全体イベントを見物させる為に世界樹前近くに移動していた

全体イベントについては、木乃香達や美砂達には結構参加を勧められたが断っている

まあ単純に見てる方が楽しそうだとの判断から参加しなかったのだ

というか下手に参加するとゲームバランスに気を使わねばならないのが面倒だっただけだが……

実際魔法関係者で参加する者は学生の見習い魔法使い程度である


「お姉さんビール一杯ちょうだい」

横島達は近くの出店で飲み物や食べ物を適当に買い全体イベントに参加する者達を見物していくが、サークルや部活ごと参加する者も多いらしく迷彩服や格闘技系の男達が目立つ

流石に小学生以下はあまり見かけないが、小学生から大学生までは溢れんばかりの人が集まっていた


「これ本当に大丈夫なのか?」

「全体イベントは毎年トラブルも多いですからね。 何年か前は成立しないで馬鹿騒ぎに発展したこともありますよ。 まあそんな展開も含めて麻帆良祭ですから」

集まった参加者と見物人の多さから本当にゲームが成立するのか疑問に感じる横島だが、トラブルはよくあるらしいと夕映は昨年までの失敗例などを説明する

ちなみに高畑がデスメガネの異名を得たのは数年前の全体イベントの暴走時の鎮圧からだったらしい

そんな異様な空気の中で全体イベントは始まるが、最終的な参加者は三万人を越えていた

世界樹を中心に半径一キロの範囲を設定し、GPSなどの先端機器を使用したハイテク鬼ごっこである

中にはサークルや部活の宣伝目的で参加してる者もおり、派手な仮装などで賑やかしをしてるだけの者もいた


「はい、もしもし……」

そんな全体イベントを見物している時、突然横島の携帯が鳴る


「なんか店がやばいみたいだから行って来るわ」

電話を終えた横島は残っていたビールを一気に飲み干すと、何かあったのかと心配そうに見つめる木乃香達に事情を話し急ぎその場を後にしていく

実は仮設店舗では後夜祭向けの注文が急増しており、急遽横島が呼び戻されることになっていたのだ

出来れば本番では横島に負担を賭けたくないからと頑張っていたようだが、流石に限界だったらしい



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