麻帆良祭

さて木乃香とパレードを見た後の横島だが、しばらく散歩した後に明日菜や夕映達と合流して少し遅い夕食にしていた

相変わらず何処の店も混雑しており食事をするのも大変だったが、それもまた祭の醍醐味なのかもしれない

その後はこの日も仮設店舗の後片付けや仕込みなど、横島はやはり夜間の方が忙しかった

超包子のメンバーが結構忙しいので仕込みや後片付けは横島と2-Aの少女達でするが、いろいろと騒ぐ少女達のおかげで作業の時間が伸びたのは言わなくても分かるだろう

そのまま元気が有り余る少女達は、再び横島の店で中夜祭パーティーと称して深夜まで騒いでいく



「若い子達はまだまだ元気なみたいね」

嵐のような夜も深夜四時を過ぎるとすっかり静かになる

半数が寮へ帰り半数が二階で雑魚寝をする頃、静かになった店を訪れていたのは刀子だった

この時フロアにはまだ片付けてない食器などが残っており、つい先程まで騒いでいことは想像に難しくない


「見回りっすか? お疲れさまです」

「後一日ね。 貴方は終わるのが寂しいみたいね」

この時横島は店を開けていた訳ではないがフロアの後片付けをしていた為に明かりがついており、たまたま通り掛かった刀子が顔を出しただけである

賑やかで騒がしい麻帆良祭も後一日になり刀子はホッとしてるようだが、横島は少し寂しそうであった


「賑やかなのが好きなんっすよ。 子供の頃とはちょっと違う立場になりましたけどね」

純粋にお祭りを楽しむ年では無くなったことが少し残念に感じる横島だが、疲れた表情の刀子に魔法のハーブティーをそっと差し出す


「そうね。 私達も大変だけどやり甲斐はあるわよ。 それに最近は卒業生のボランティアも多いから助かってるもの」

柔らかく身体に染み込むようなハーブティーを一口飲んだ刀子は、僅かに身体が軽くなるような感覚の中で麻帆良祭について語り出していた

実際年々規模が拡大してく麻帆良祭では、三日間で総勢数万人にも及ぶ卒業生のボランティアがあちこちで働いているらしい

それも自発的に集まり手伝うようになったようで、学園や魔法関係者が高い士気を保つ理由にもなっている


「そういえば貴方、報道部と組んでストーカー締め上げたんだって? こっちまで話が届いてるわよ」

麻帆良祭の話題から思い出したように刀子が話を持ち出したのは千鶴のストーカーの件だった


「別に締め上げた訳じゃないっすけどね」

「担当の教師陣もあの子達には何度も注意はしていたのよ。 中には面白半分で加わってる子も多かったから」

予想外な人から話が出て来た横島は若干苦笑いを浮かべるが、刀子はあの連中に関する事情を語り始める

報道部が掴んでいたストーカーの情報は教師陣にも当然入っていたらしく、何度も指導が入っていたらしい

ただ基本的に麻帆良学園は恋愛自体は禁止してない為、節度やモラルを持たせることを主体にした指導だったらしいが……



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