麻帆良祭

一方麻帆良祭を満喫する横島と対照的に表の麻帆良学園の関係者や裏の魔法関係者は、目が回るような忙しさの中を働いていた

過激な非公式イベントへのチェックや各クレーム対応やケンカの仲裁に、タチの悪いのだとスリや恐喝など犯罪を犯す者も多い

加えて暴力団やマフィアの下っ端がドラッグなどを持ち込むことも多少なりとも存在する

麻帆良祭という華やかで甘い蜜は外から見てると魅力的らしく、そういった悪い虫が群がることも少なくなかった

麻帆良学園は魔法協会の情報網や警察と連携して、犯罪者達は徹底的に取り締まりをしている


「毎年捕まえても本当に懲りんのう」

「今年は某国のマフィアが多いようですが……」

さて麻帆良祭期間中の近右衛門は、学園長として公式行事や各イベントに顔を出すなど表の仕事が多い

そんな合間を縫って裏も含めた報告を受けていたが、表沙汰に出来ない苦労は本当に多かったようだ

特に麻帆良は特殊な街で暴力団やマフィアなどの裏の組織が存在しない空白地帯なため、あの手この手で付け入ることが多いのである


「やはり真の目的は産業スパイでしょう。 雪広・那波両社とも協力して阻止しております」

「下っ端を捕まえてもキリがないからのう」

麻帆良祭での問題点は昔から様々あるが、近年特に問題になっていたのは産業スパイの存在だった

まあ産業スパイ自体は昔から存在したが、近年それが悪化の一途を辿っている

麻帆良学園のセキュリティは日本でも随一だとの自負はあるが、決して油断できるものではない

ネギ絡みで魔法関係のスパイが増えることも想定したが、結局は地球側の産業スパイが多かったようだ


「本当ならもう少し国で対応して欲しいですが……」

「無理じゃろうな」

魔法協会が必死にスパイへの対応をするが、関係者はもう少し国にしっかりして欲しいのが本音だった

しかし現状ではそれが無理なのは、近右衛門のみならず報告している者も理解している

そもそも日本の政財界には本当の意味で国益を考えてる者は多くはない

まるで漫画のようなアホな政治家や売国議員が、少なくない数で存在することを魔法協会は掴んでいる

まあ魔法協会は政治に関わるつもりがないから特に手出しはしないが、情報収集能力と危機管理は日本政府より魔法協会が数段上だった


「疲れてるじゃろうが、皆に最後まで気を抜かないように言うてくれ」

一通り報告を聞き終えた近右衛門は、残りの期間を無事に終えることを願いつつ部下に気をつけるように告げるしか出来ることはなかったようだ

華やかで幸せが満ちてる麻帆良祭だが、光が強ければ当然影もまた濃くなる

麻帆良が綱渡りの平和と幸せなのは麻帆良祭でも変わらず、独立勢力なだけに全てを自分達でやらねばならない


「皆に少しは報いてやらねばならんのう」

せっかくの麻帆良祭を影で働く魔法関係者に近右衛門は感謝してもしきれない想いでいっぱいだった

せめて少しでも臨時でボーナスを出せないかと、しばらく苦心する近右衛門の姿が見られたと言う


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