麻帆良祭

「相変わらず非常識な図書館だよな」

一般人を連れて図書館探検をする横島達だったが、基本的に横島はやることがない

木乃香達が解説しながら歩くが横島は何も知らない為に参加するだけだったのだ


「図書館島は建築当時の資料が残ってないので、何故こんな図書館なのか分からないんですよ」

ツッコミどころが満載な図書館を誰もが受け入れてることは魔法の効果そのものであり、横島もあまり余計なことは言えなかった

木乃香達が一般人相手に解説しているので横島は人見知りなのどかと後方を歩いているが、つい余計なことを言いそうになり言葉を飲み込む


(余計なことを言うと魔法が利かなくなる可能性があるからな~)

麻帆良を包む魔法は決して強力な魔法ではない

多少なりとも魔法への抵抗力があったり疑問に気付いたりすると、効果が薄れたり利かなくなる程度の魔法なのだ

ある意味知らない方が幸せなことなだけに、横島は魔法の秘匿には気をつけている


「それにしても……、夕映ちゃんは妙な飲み物が好きだな」

それからしばらく歩き休憩所に到着した一行は休憩するが、夕映は自販機に売っている妙なジュースを飲んでいた


「飲んでみますか?」

「今はいいや」

微妙な表情の横島に夕映は一口飲むかと勧めるが、横島は素直に断ってしまう

夕映がよく飲む麻帆良市内限定の飲み物は、基本的にまずくはないのだ

ただ美味しくもないという評価が難しい飲み物が多い

ちなみに製造者は麻帆良学園の飲料研究会なる謎のサークルだったりする

評価が微妙な飲み物を販売している彼らだが、意外とコアなファンがいるらしく赤字にはなってないらしい



その後無事に探検大会が終わった横島は、パレード見物の為に木乃香と一緒に世界樹前広場に向かっていた


「なんかさっきからたまに視線が集まってるな」

「なんでやろ?」

ごくごく普通に歩いてる横島と木乃香だが、先程から周りの人達の視線を集めている

何かあるのかと自分達の服装を見たりもするが特別おかしなところはない

横島も木乃香も意味が分からず首を傾げながら歩くが、二人はある物に気付くと固まってしまう


「あれは……」

「写真やね……」

二人が発見したのは横島と木乃香が写った写真である

しかもポスター並の大きさに拡大されており、めちゃくちゃ目立っているのだ

写真は横島の口元を木乃香が吹いてる瞬間であり、それは絶妙な瞬間であった

ちょっとだらしない年上男性としっかり者の年下少女の構図は端からみると思わず笑みがこぼれるほど幸せそうな写真なのだが、流石に本人達はちょっと恥ずかしい

これがまた人物部門の大賞を取ってしまったらしく、他の数枚の写真と一緒で拡大されて飾られていたのだ


「逃げよう」

そこは世界樹前広場の一角にある展示スペースで、写真コンテストの他にも各種大会の優勝者の写真なども貼られている

しかし横島と木乃香の写真も十分目立っており、周りの人達が横島達に気付き写真と横島達を見比べて騒ぎ出したのだ

横島は木乃香の手を握るとスルスルと人混みの間を抜けて逃げて行った




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