麻帆良祭

「面白いことしてるわね~ 本当に記事にしていいの?」

「ああ、そのかわり証人としてよろしく」

それから対決する種目について話がされるが、横島は相手の好きにさせていた

その間に事態の変化を悟った木乃香達と合流して、報道部の朝倉和美を呼んで貰っていたのだ

横島は対決種目は相手側に任せたが、証人と判定員に報道部を使うことを求めたのである


「おい、あいつマジで俺達を追い出すつもりだぞ」

「俺はお前らとは違うからパスするわ」

報道部が現れ横島が全てを記事にする代わりに証人と判定員をするように交渉すると、五十名ほどにまで増えていた男達は一気に減って行き八名ほどになってしまう

逃げて行った男達は面白半分で集まった者や見物人も多かったので当然の結果である



「ちょっと横島さん! なんて約束しちゃってるのよ!!」

「ほんまに負けたらどないするん?」

一方事情を知った木乃香達だが、当然彼女達は対決の約束に慌てて横島に詰め寄っていた

明日菜は慌てて約束を変えるように言い出し、木乃香は心配そうにたしなめるが横島は意味ありげな笑みを浮かべたまま態度を変えない


「もしかして怒ってますか?」

「ちょっとな」

明日菜達のみならず美砂達も止めるように横島を説得する中、一人冷静に横島を見ていた夕映は横島が怒っている事実に気付く


「勝算は……、聞くまでもないのでしょうね」

「ゆえ、どう言う意味?」

横島が珍しく怒ってる事実に気付いた夕映は、横島が何かしらの勝てる勝算があるとすぐに理解する

一見すると後先考えないタイプに見える横島だが、今回のように明らかに不利な状況に気付かないほど馬鹿ではない

夕映自身も半分ほどしか横島の考えが読めないが、恐らく負けないだろうと読んでいた


「貴方達もこの件を報道することに承諾するのね? どっちが勝っても記事にするわよ」

一方朝倉は追っかけ集団の残った八人に条件や記事にすることへの最終確認していた


「もちろんだ。 あいつを麻帆良からたたき出してやる」

「俺達が千鶴ちゃんを守るんだ!」

「貴方達、本当に頭悪いわね。 この勝負貴方達が勝っても負けても那波さんには二度と近づけなくなるわよ」

残った八人は最終確認にも承諾してやる気を漲らせるが、そんな八人に冷や水を浴びせたのは朝倉である


「えっ……」

「那波さんが迷惑してるストーカー集団の話は報道部でも前々から何度か話に出てたもの。 今回の件を記事にすれば仮に貴方達が勝っても世間が許さないわよ」

朝倉の説明に男達だけでなく木乃香達まで静まり返りポカーンとしてしまう

意味が解らないといいたげな者がほとんどであり、唯一この流れを読んでいたのは夕映一人だった


「基本的に報道部は学園内の個人的な問題は双方の許可がないと報道しないから今まで報道出来なかったけど、貴方達はもう承諾しちゃったし。 今後学園内で貴方達の味方はいなくなるわよ」

淡々と説明する朝倉に男達の顔色はすっかり青ざめてしまう

男達は横島と本気で勝負するつもりだったが、横島はまともに付き合うつもりなどなかったのだ

罠にハマったと気付くが、先程からのやり取りすらすべて撮影され続けておりどうしようもない



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