「あの二人何するの！？」

「まさかここで！？」

突然道の真ん中で止まりまるで周りに見せ付けるように目を閉じた千鶴に、明日菜や美砂達は当然勘違いをするが男達はもっと酷かった

千鶴を必要以上に美化している彼らは、千鶴がどこの馬の骨とも知れぬ男とキスをするなど認められるはずがない


「それ以上の無礼は俺達が許さん！！」

その時一応隠れてるつもりだった男達は我慢が出来なくなったのか横島と千鶴の前に走って行き、何の前置きもなく許さないと大声を上げる

しかし突然のことに千鶴は何の事か分からずに首を傾げてしまうし、横島は彼らの気持ちを理解するが故に微妙な表情を浮かべていた


「行きましょうか」

そんな男達の理不尽な怒りと嫉妬に最初に動いたのは千鶴である

どうやら見なかったことにしたいらしく無言の抗議の意味を含めて横島の腕を絡め再び歩き出すが、この程度で諦めるならこんなストーカー紛いの行動はしないだろう


「千鶴ちゃんと付き合いたければ俺達に認められてからにしろ！！」

男達は横島と千鶴の後を離れず好き勝手なことを言い出すが、あまりのアホな展開に横島は対応に苦慮する

彼らは見た感じオタクっぽくて、睨むことと叫ぶことしかしないのだ

どうも自分達は千鶴を優しく見守ってるつもりらしい


「迷惑ですから止めて下さい」

「那波君は騙されてるんだ！」

いつまでも着いて来る男達に流石に千鶴も我慢が出来なくなったのか単刀直入に迷惑だと言うが、男達は千鶴が騙されてるからと言い千鶴の言葉すら信じない


（頭腐ってるんじゃないか？）

自分達は千鶴を見守り正しいと信じて疑わない彼らに、横島は思わず本音が漏れそうになる

というかここまで来ると、横島にすら理解出来ない相手だった


「那波君と付き合いたければ、俺達全員と勝負して勝ってからにして貰おう！」

まるで青春漫画に出てくる生徒会長のようながり勉君が横島にそんなことを言うが、横島はすでに呆れて物が言えない


「えっと……カメラどこだ？」

「ドッキリなんかじゃない！　僕達は那波さんに相応しくない相手は絶対に認めない！」

ずっと無言だった横島は返答を待つ彼らに突然笑い出してカメラを探す仕種を見せるが、彼ら本気らしく更に怒りの表情を見せる


「いつもこうなのか？」

「……はい」

怒りの表情で睨む男達に横島は呆れた表情で千鶴に確認するが、いつもこんな感じらしい

恥ずかしそうに返事する千鶴が横島は段々かわいそうになって来る


「分かった。　なら一回だけ勝負してやるよ。　ただし負けた方は学校や仕事を辞めてすぐに麻帆良を出ていくこと。　お前ら全員その覚悟があるならいいよ」

先程までと違い突然真剣になった横島は条件を突き付けるが、その言葉には千鶴も男達も驚きを隠せない

ハッタリだと感じる者も居るが横島の表情は真剣そのものだった

女の子を苦しめる連中に情けをかけてやるほど、今の横島はお人よしではない

まして話し合いで解決するなど不可能な事態を何度も経験して来たし、人を相手に戦ったことも何度もある

先程までは適当に懲らしめてやるかくらいに考えていたが、千鶴が予想以上に迷惑な様子を見て麻帆良から追い出した方がいいかと考えていたのだ