麻帆良祭

そのままゆっくりプラネタリウムを鑑賞する一同だったが、横島自身はプラネタリウムに行ったのは小学以来だった

かつてプラネタリウムを見た頃は星のことなど理解せずに、ただプラネタリウムが珍しかっただけである


(宇宙か……)

天文部員が一つずつ星座や星々を解説する中でプラネタリウムは進行するが、それは解りやすく堅苦しくないように工夫された解説だった

昔は聞き流していた星座の話なども今なら素直に楽しめる自分に横島は、流れた時の長さを感じずにはいられない


(そういえばアシュタロスが残したデータに、生命が宇宙に進出した世界の情報も結構あったな)

宇宙や星座の話を聞いている横島だが、ふとアシュタロス残したデータを思い出す

横島自身もほとんど把握してないが、アシュタロスは異世界に関しても積極的に情報収集を行っていたらしいのだ

恐らくはコスモプロセッサー関連なのだろうが、異世界の異なる歴史や技術にも興味を示していたデータが異空間アジトには残っている

元々横島がこの世界に渡って来たのもそんなアシュタロスが残した技術の一部であり、横島や土偶羅でさえも全てを把握してる訳ではない

ただアシュタロスは自身の知識や技術及び、研究成果の全てを異空間アジトにデータとして残していたのだ

アシュタロスが残した情報は全てコスモプロセッサー型のメインシステムに残っており、これは世界の改変こそ出来ないがコスモプロセッサーと同じ情報処理能力などがある

ある意味究極のコンピュータと言える代物だった


(プラネタリウム見て考えることじゃねえな)

いつの間にかプラネタリウムを見てアシュタロスを思い出した横島は、苦笑いを浮かべるしか出来ない

星空に夢を見るには少々知らなくていい世界を知りすぎたのだろうが、横島はそんな自分がちょっと悲しかった


「どうでしたか? 興味が出たなら今度は天文部の観測会にも来て下さいね」

プラネタリウムも終わり木乃香達も楽しかったらしく評判がいいのだが、千鶴は何故か横島に寄り添うように歩き積極的に天文部の活動を誘っている

そのあまりに近い距離に千鶴に好意を寄せる男達の視線は更に厳しくなるのだが……


「千鶴ちゃん、わざとだろ?」

「なんのことですか?」

いつになく近い距離を歩く千鶴に横島はその意図を見抜くが、千鶴は笑顔のままとぼけている


「ねえ、わざとって何のこと?」

「アスナは相変わらずね~ 邪魔な男達に見せ付けてるのよ」

小声で会話した横島と千鶴の声が聞こえた明日菜は、言葉の意味を木乃香達に尋ねるが答えたのは美砂だった


「見せ付けてどうするのよ」

「あんな連中に付き纏われたら怖いでしょ? だからあの連中を追い払いたいのよ」

イマイチ理解してない明日菜に美砂は少々乱暴な言葉で説明するが、言ってることは当たっている

千鶴は自身や天文部が迷惑してる男達を追い払うのが目的らしい

千鶴としては好きになってくれるのは有り難い気持ちもあるが、正直現状は迷惑以外の何物でもなかったのだ

天文部にも迷惑をかけてるし、彼らのせいで千鶴自身も肩身の狭い思いをしているのだから



69/95ページ
スキ