麻帆良祭

一通り騒いだ横島達はメイド喫茶を出て中等部を後にしていた

横島達三人はすでに二軒目の喫茶店であり、特に少食なのどかはすでにお腹いっぱいだったのである

結局どこかのサークルか部活の出し物でも見物に行こうということになり移動するのだが……

好奇心旺盛な美砂達三人が居るせいかあっちこっちのイベントに顔を出しては、短時間で済むイベントには積極的に参加していくことになる


「流石アスナね~ 凄い馬鹿力だわ」

そして注目を集めていたのは、横島ではなく明日菜だった

彼女が参加したのは麻帆良学園に複数ある高校の野球部が合同で行っているイベントの一つであり、女性限定で高校生のピッチャーと勝負するといった内容である

野球部の狙いが何のなのかは言わなくても分かるだろうが、麻帆良第二野球場で行われていたそのイベントは参加費が一回二百円で賞金が最大三万円

野球場の外野をだいぶ狭めており、普通の外野フライでもホームラン判定で三万円になるような仕組みだった

多くの女性がバッティングセンター感覚で挑戦するのだが、当然バットに当たるだけでも珍しい

そんな中で横島に簡単なバットの握り方と振り方を教わった明日菜は、アッサリと本当のスタンドまで運んでホームランを出してしまったのだから企画した野球部の人達もポカーンとしてしまう

実際まぐれ当たりだったとしてもありえない飛距離なのだ

あまりの飛距離に明日菜が恥ずかしくなるほど見事なホームランだった


「プロ野球狙えるんじゃないか? 女性初のプロ野球選手になれるかも」

「私は横島さんに言われた通り振っただけなのよ!?」

賞金を貰った明日菜は輪投げに続きホームラン賞としてここにも名前が残るが、本人は微妙に恥ずかしいらしい

横島はそんな明日菜にからかうように声をかけるが、明日菜自身は横島のおかげだと言いたいようだ

ただ実際横島は普通に握り方と振り方を教えただけで何もしてないのだ

案外一番驚いたのは横島だったのかもしれない


「アスナの馬鹿力は世界に通用するわ」

「次はボクシングなんかいいんじゃない?」

「道場破りみたいで楽しいね」

一方明日菜の予想以上の活躍に爆笑していた美砂達は、この調子で明日菜にイベント挑戦させようと盛り上がっていく

明日菜としては若干抗議はするが、実際賞金を貰ってちょっと気が大きくなっている部分も多少あったりする


「のどかちゃんはクイズ大会なんかどうだ?」

「わっ、私はダメです!!」

そんな中明日菜が活躍したことで横島は次はのどかが得意そうなクイズ大会にでも行こうかと話を広げるが、美砂達が盛り上がる前にのどかが全力で否定してしまう

いつの間にか横島には慣れているのどかだが、相変わらず他の男は苦手なままだったりする

そもそものどか自身なぜ横島に慣れたのか不思議なくらいなのだ


「そういえば、横島さんと桜子って宝くじ当てたのが親しくなるきっかけだったわよね。 まさか……」

前回の洗濯機に続き最近妙に運がいい現状に、明日菜は何故か横島が原因ではと考え始める

偶然と言えば偶然なのだろうが、何か横島と出会って変わった気がしてならないのは明日菜が潜在的に横島に何か感じてる証なのかもしれない



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