麻帆良祭

その後慌ただしく時間は過ぎて、麻帆良祭開幕まで後五分となった朝の八時五十五分

仮設店舗のフロアには2-Aの少女達と超包子のメンバーに横島と高畑が揃っていた

例によって部活やサークルの方に行ってる者もおり全員ではないが、八割くらいのメンバーが揃っている

昨日まで十分経験を積んだため不安そうな者は少ないが、ワクワクしたような程よい緊張感に包まれていた


「では皆さん、怪我や事故のないように気をつけて頑張りましょう」

揃ったメンバーを前にあやかが代表して挨拶をするが、2-Aにしては珍しく静かに聞いている

まあこの場で騒ぐほど空気が読めない訳ではないようだった

あやかに続き高畑が注意事項を幾つか話すと時間はすでに開店まで一分を切っており、まるでこれからスポーツの試合が始まるかのように円陣を組み気合いの声を上げる



店舗の看板には《ファンタジーレストラン》というシンプルな店名が書かれており、共同出店が超包子とマホラカフェで雪広グループの協賛や工学部などの協力も看板とは別に書かれてた

そしてこのファンタジーレストランは、今年の麻帆良祭の新たな伝説になるのだが……

原因の根源たる横島は今のところその自覚は皆無だった



「いや~、スゲー混んでるな」

いよいよ麻帆良祭が開幕するが、あちこちから流れる音楽や歓声で昨日までとは大違いである

仮設店舗には開店早々多くの客がつめかけており、同じ敷地内の雪広グループの各種施設も当然混雑していた

こちらでは有名芸能人が開幕に合わせて歌とトークで盛り上げており、多くの観客がすでに騒いでいるのだ

上を見上げれば飛行船や気球や複葉機が空を彩っており、全てにおいて前日までとはまるで違う様子であった


「横島さん今日の予定はどうなってるん?」

「午前中は誘われたイベントとか見に行くつもりだよ。 チアリーディングと新体操とか誘われてるからさ」

この日の横島達の担当時間は夕方からである

朝からは超達のグループであり横島は木乃香達と少し様子を見ていたが、大丈夫そうなので今日の予定を話していた


「結構誘われてたもんね」

「ああ、他にも常連の子達にも誘われてるからさ。 早めに回っておこうかと思ってな」

仮設店舗から中等部の地区に移動しながら会話をする横島達だったが、最終的に横島はかなり誘われた予定が増えている

スイーツを頼んだ子達の出し物なども誘われており、横島はあちこちに顔を出すつもりだった


「暇だったら一緒に行かないか?」

「ウチは占い研究会があるから無理なんよ」

「私も哲学研究会の方がありますから……」

横島は一緒にいる木乃香達を誘うが、木乃香と夕映は忙しいらしく午前中は明日菜とのどかを連れて回ることになる

ちなみに夕映達と仲がいいハルナは、例によって非公式に同人誌を販売する為にいち早く居なくなっている

やはり基本的に期間中一番暇なのは明日菜であり、次がのどかだったのだ
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