麻帆良祭

「ああ、それでいいぞ」

深夜十二時を回った頃、店内は相変わらず賑やかだった

フロアでは多くの少女達が賑やかに騒いでおり、相変わらず帰る気配もない

一方厨房では何故かお菓子教室のようになっており、横島が十人ほどの少女達を相手に簡単なお菓子の作り方を教えている

現在は和菓子が一段落したのでクッキーなどの焼き菓子を作っていたのだが、ついでに作るコツなんかを教え始めて空いてるスペースで一緒に作らせてみたところお菓子教室のようになっていたのだ


「こんな物まで注文を受けてたのですね」

「基本的に最初の頃は何でも断らなかったからな」

少女達にお菓子の作り方を教えつつ注文された物を作る横島だが、正直喫茶店に全く関係ない注文品も結構ある

注文内容を見た夕映は若干引き攣った表情を浮かべるが、横島は特には気にしてないらしい

中には横島が店に出したことがないスイーツも混じってるが、横島ならば作れるだろうと軽い気持ちで頼んだ品も多いようだった


「麻帆良祭終わったらお客さん増えそうね」

「ん~、どうかな。 一応、店の名前を出さないように頼んでるんだよね」

女子中高生の出し物関係に多くのスイーツを提供してるだけに麻帆良祭後の繁盛を期待する明日菜だったが、横島はすでに注文品に関しては店の名前を言わないように頼んでいる

やはりこれ以上忙しくなるのは望んでないのだ


「甘いわね。 口コミで広がるのは時間の問題よ」

「その手の情報が回るのは早いですからね」

横島が口止めしてる事実に明日菜や木乃香は苦笑いを浮かべるが、ハルナや夕映は横島の考えが甘いと言い切る

正直この手の情報を隠そうとしても麻帆良では無駄だと確信を持っているようだ


「そうなのか? しかし今更ダメだとも言えんしな~」

横島の行動とは裏腹に麻帆良祭後は状況が変わるだろうと言う少女達に、横島はちょっと困った表情を見せるがなるようになるかと簡単に流してしまう

横島自身としては現状以上には仕事を増やすつもりはないが、その気になれば対処方法はいくらでもある訳だし……



それから時間が過ぎて午前三時を過ぎた頃、二階の住居部分ではあちこちで雑魚寝する少女達の姿があった

しばらく店で騒いでいた少女達だが少し休みたいから二階を貸してほしいと言われ、部屋を貸したらいつの間にか大半の少女達が雑魚寝をして寝てしまったのだ


「うちのクラスの子達がいろいろ迷惑をかけてすまないね」

一方喫茶店には先程から高畑が訪れており、好き勝手に騒いで部屋に上がり込んだ生徒達のことで謝罪をしている

横島が麻帆良祭の出し物に参加してからしばらく日にちが過ぎているが、正直高畑と顔を合わせたのは数えるほどしかない

しずなや新田などの一般教員が代わりに何度か顔を出しているが、基本的には高畑も同じ程度でありほぼあやか任せであった


「俺は賑やかな方が好きですから気にせんで下さい。 それにしても大変そうっすね」

最近は横島と顔を合わせる度に謝罪しかしてない高畑だったが、彼にはとても余裕があるようには見えないし正直多少の疲れも見え隠れしている



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