麻帆良祭

日が暮れて街が夜の闇に覆われると麻帆良湖では花火も上がり始めていた

図書館島や麻帆良湖の湖畔では、花火見物をする人で混雑するほど盛り上がっている

そんな麻帆良湖の湖畔には、図書館島や横島の店に負けないほど古い建物が存在した

しかし唯一違うのはその建物が他より格段に豪華な建物なことだろう

地上三階建てで広い西洋式庭園に囲まれている、麻帆良で一番古いホテルであった

開業は明治初期と日本でも有数の歴史を持つそのホテルは、麻帆良学園へ来る西洋人の為に造られたホテルだと言われている

一説には戦前の日本で一番豪華なホテルだとの噂があったほどの豪華なホテルは、麻帆良学園から経営委託された雪広グループが現在経営していた



そんなホテルの一番広い部屋では、現在麻帆良学園主催のパーティーが行われている

麻帆良祭に協力や参加した企業や団体などを招いてのレセプションパーティーなのだが、実情は麻帆良学園や雪広グループを中心とした企業の交流の場になっていた


「今年は大物が多いな」

「雪広会長と那波会長が揃うのは何年ぶりだ?」

そんなパーティー会場で一際注目を集めていたのは、あやかの祖父である雪広清十郎と千鶴の祖母である那波千鶴子の二人である

日本を代表するような両企業のトップが揃うのは近年では珍しいらしく、中堅以下の企業の関係者は驚きを隠せない

両者共に経営の第一線はすでに息子夫婦に譲っているが、その影響力は現在も計り知れないものがあった

雪広グループに関しては以前に説明したので省くが、那波重工も基本的には同じであり関東魔法協会との繋がりが深い企業である

歴史はさほど古くはなく雪広グループほど長い付き合いではないが、既存の経済団体から距離を置く経営手法は同じであり事実上の魔法協会の協力企業だった

まあバブル崩壊後は雪広・那波両企業に接近する企業が増えた為に、事実上の経済系の団体と言うか経済界の派閥になっているが……

両社は表向き麻帆良学園の協力企業としての関係が強く、経済団体としての形を取ってない為に両社に近付く企業は麻帆良学園への協力企業となってるのが現状である

まあ裏には政府や政治家の無用の介入を避けたい雪広・那波両社の思惑など複雑な事情があるが、両社と関係を深めるには麻帆良学園の協力企業になるのが近道だった

まあ実際はその麻帆良学園への協力企業に加わるのでさえ非常に困難なのだが……



「珍しいのう。 お前さんが顔を出すなんて何年ぶりじゃ?」

「必要とあればいつでも来ますわ。 お互いに言葉にしなくても理解出来る付き合いですもの」

そんなパーティー会場で挨拶回りをしていた近右衛門が那波千鶴子の元に来ると、周りの人々は態度にこそ表さないが何を話すのかと固唾を飲んで見守っていた

近右衛門・清十郎・千鶴子の三人が学生時代からの友人なのはある程度有名な話だが、この三人の話で次の日の株価が変わるとの噂があるほど注目を集める立場なのである



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