麻帆良祭

そのまま担当時間を無事に終えた横島は、木乃香達などの一緒だったメンバーを連れて前日祭で賑わう世界樹前広場を訪れていた

特設ステージでは昨年の麻帆良祭の各イベントで優勝した吹奏楽サークルやロックバンドなどが演奏をしている

麻帆良祭の前日には前日祭や前夜祭が行われるが、メインである世界樹広場の特設ステージで行われるイベントは前年の麻帆良祭の注目を集めた者達による演奏や演劇などが行われることが基本だった


「かんぱ~い!」

特設ステージの観覧席から更に後方にはたくさんの有名飲食系サークルの出店があり、横島達はそこで飲み物や食べ物を買ってこれから始まる前夜祭を見物しようとしている


「楽しんでるようネ。 これは差し入れヨ」

乾杯をして横島はビールを少女達はジュースを飲み一息つくと、突然現れた超鈴音は二、三品の中華料理を差し入れだと言い持って来ていた


「サンキュー、一緒にどうだ?」

「参加したいけど残念ながらお料理研究会の屋台の仕事中ネ」

突然現れた超に横島は驚きもせずに一緒に食べないかと誘うが、どうやら超は仕事中らしい

お料理研究会は超包子の母体でもあるが、知名度も高く独自に屋台を出してるようだ

まあこちらは大学生を中心にしたメンバーが居るため、超がそれほど活躍しなくても十分やっていけるようだが……


「差し入れありがとうな」

どうやら忙しいようで超は差し入れをするとすぐに屋台に戻っていく

そんな超の後ろ姿を見つめていた横島は少し超のことを考え始める


(経歴不明の留学生か…… 学園長のじいさんもよく受け入れたな)

超鈴音が要注意人物なのは麻帆良に来た当初から知っていた横島だが、現在の段階でも超の過去は不明なままだった

学園側は元より土偶羅の調査も空振りだったことから、その過去が普通でないのは明らかである

異空間アジトのシステムを使用して世界の何処でも見ることが出来て、コンピューター関係も痕跡すら残さず侵入出来る土偶羅の調査でも過去が判明しないのは異常としか言いようが無かった

過去を消しても普通は痕跡くらいは残るはずであり、ひょっとすると横島と同じように元々この世界に存在しない可能性も考えられている

まあ土偶羅とて世界の全てを調べた訳ではないし、証拠や過去を完全に消すことも不可能ではない

ただ一つ言えるのは、超があの驚異的な知識を学んだ形跡がまるでないのは不自然だという結論である

仮に茶々丸や立体映像が彼女の発明だとしても、基礎的な学問を学んだ過去が見つからないのはおかしいのだ


(過去はまあいいが、問題はこれからだな。 彼女は信念を持つ人間だ)

超の謎について横島は一応土偶羅に調査はさせているが、その理由は危険性云々ではなく彼女が信念を持つ人間だからである


(彼女の信念とぶつからなきゃいいがな)

横島が気にしているのは彼女の信念と目的だった

強い信念から来る目的が仮に横島に影響がないモノならば構わないのだが……


(まあ気にしたって仕方ないか)

出来れば巻き込まれたくないと願いつつ、横島は目の前の少女達との時間に戻っていく

横島にとって大切なのは今の時間だった



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