横島君のお店開店

横島が物件を借りて一週間が過ぎた頃の三月末、いよいよマホラカフェが開店する日となる

この一週間も横島は一日に数時間だが世界樹前広場で占いをしており、常連の客には喫茶店を開く事を教えてそちらに来て欲しいと営業していた


「立派な花だな~」

開店日の朝、横島の予期せぬ事が起きてる

開店祝いの大きな花籠が三つも届いていたのだ

三つの送り主だが麻帆良学園と麻帆良学園報道部と、最後は超包子であった


(魔法協会は全く動かずか…… 木乃香ちゃんのバイトの件もスルーしたしな。 決まりさえ守れば排除はしないってか。 案外したたかだわ)

木乃香のバイトの件以来魔法協会が監視や警戒を強めるかもしれないと様子を見ていた横島だったが、土偶羅からは素性の調査以降全く動きがないと報告があり肩透かしを食らった形である

迂闊に監視や警戒しない魔法協会は案外したたかなのだと、横島は少し評価を改めていた

土偶羅の報告では魔法協会は全体的にセキュリティが甘いが、平和な世界の日本だと考えると妥当なレベルだという

基本的には平和路線であり、よほど問題を起こさない限りは異端な者も受け入れてるようであった

出来るだけ敵を作らないその姿勢は寛容であり、組織のトップの器がわかる結果である


「超りんからも花籠来たんやね」

「ああ、朝飯とかに結構通ってたからな~ しかし俺あそこの連中に開店日時なんて教えてないんだが……」

麻帆良学園は敷地内の新規開店には全てに花籠を送るらしいので珍しくなく報道部は二度取材を受けたからだろうが、超包子は少し珍しいようであった

横島は料理の楽しさに目覚めたがそれは気に入った女の子に作るのが好きなだけで、自分の為に料理を作る事はないままである

結果として横島は今だに自分の食事は適当だった

最近は朝食を超包子で昼食を木乃香達と一緒に、そして夕食はレトルト食品やカップ麺の生活を続けている

異空間アジトには内部で生産された食材や加工品がたくさんあるが、レトルト食品やカップ麺といった現代的な食べ物は作ってない

異空間アジトでは食材や加工食品は時間が凍結された空間に随時保管されてるため、レトルト食品やカップ麺といった物が不要だったのだ

しかし久しぶりに現代的なレトルト食品やカップ麺を麻帆良で手に入れた横島は、かつて貧乏時代に食べたそれらにハマっていたのである


そんな訳で超包子の常連となっていた横島は喫茶店を開店する事は伝えたが、開店日時などの詳しい情報は言ってなかったのだ


「超りんは何でも知ってるんや」

木乃香は超鈴音が開店日時を知っていても不思議ではなく当然だと言うが、横島はイマイチ理解出来なかった


「お客さん来るかな? まああんまり来過ぎても困るけどさ」

「今朝クラスのみんなに宣伝して来たから、誰かは来てくれると思うわ」

基本的に一切宣伝してない横島だったが、木乃香はクラスメートや部活の友人に地道に宣伝している

夕映や明日菜が危ういと言うだけに、木乃香も客が来るか心配だったらしい



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