麻帆良祭

「情報通り混んでるわね」

「美味しいって結構噂になってるものね」

お昼を過ぎた頃、たくさんの生徒で混み合う仮設店舗の敷地内に姿を現したのは刀子とシャークティだった

二人は仮設店舗や雪広グループのパビリオンを眺めつつ周囲に散らばる魔法関係者と一瞬視線を合わせる


「今年は警備要員が三人か。 少し多い気もするわね」

「最近向こうとの関係が緊張気味だから警備を強化したのよ」

二人がここに来たのは無論仕事の為であり、木乃香の警備体制の確認である

2-Aの店舗が評判になり混雑しているとの情報から二人は警備の確認に来たのだった

ちなみにシャークティが言う三人というのは木乃香の専属の警備員である

通常は常時警備までしてないのだが、麻帆良祭期間中に限定して木乃香の警備を三人付けていたのだ


「まさか本国が無関係なお嬢様に手を出すとでも?」

「私も三人は多いって学園長に言ったんだけど、学園長は心配みたい」

二人は認識阻害の魔法を使い警備について話をするが、シャークティは魔法を知らない木乃香にメガロが手を出すはずはないと考えているようだし、刀子も三人の警備員は流石に過剰だと言う

しかしこの決定の裏には隠されてる裏側があるのを刀子は知っている


(お嬢様はともかく神楽坂さんは一体なぜ?)

実は刀子はシャークティにも言えない密命を受けている

それはもし期間中に木乃香の周辺に危機が迫れば、木乃香と一緒に明日菜も極秘理に誰にも悟られぬように守るようにとの密命を受けていたのだ

しかもこの密命に関しては他の魔法関係者にも秘密にするようにきつく言われており、加えて明日菜を守る件は決して他者には悟られないようにしろとの無理難題である

あまりにきな臭い密命に刀子は流石に密命を受けるか迷ったが、近右衛門に何度も頼まれて受けた経緯があった


(寮の部屋もお嬢様と一緒だし何か重要な人物なのは間違いないわね)

あえて詳しくは聞かなかった刀子だが、明日菜が何らかの理由で今まで近右衛門に密かに守られて来たのは悟っている

結果として木乃香への警備の強化を名目として、警備員達に周囲に気をつけるように言うしか今は出来ないのだが……


「せっかくだからここでお昼にしましょうか」

「そうね」

刀子が僅かに考え込んでる間にシャークティは店舗に向けて歩き出しており、二人は少し遅い昼食を取ることにしていた


「こんにちは、凄い繁盛してるわね」

仮設店舗に入り料理を注文して座る席を探していた刀子達は、あやかや千鶴達と昼食を食べていた横島を発見する


「来てくれたんっすか?」

「ええ私とシャークティは広域指導員も兼任してるから。 仕事のついでにね」

刀子達を見つけた横島は同じテーブルに二人を誘い世間話程度の話をするが、一緒に居るあやか達はともかく周りの人間には横島がナンパしたようにも見えてしまう
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