麻帆良祭

その頃仮設店舗のフロアは多くの学生で賑わっていた

インテリアや装飾も中学生には思えぬ完成度であり、加えて開発中と噂されていた立体映像も評判を呼んでいる

インテリアと立体映像の組み合わせが双方を更に引き立てており、ちょっとしたアトラクション気分で来る者も多かったのだ

客の中には見物しに来ただけの人も少なくないが、それでも美味しそうな匂いに誘われてついつい軽食を買ってしまう者が多い

実は麻帆良祭では毎年多くの出店や出し物が現れるが、飲食系でここまでアトラクション性を出すことは珍しかった

まあ大学部など麻帆良祭に情熱を燃やして一年掛かりで準備してる者達にはこの仮設店舗を越える物が幾つか存在するが、中等部では恐らく史上初といえる完成度と規模である

これで料理が普通以下ならネタに走ったと思われて終わりなのだが、料理の質がプロ並みとなればその評判は更に上がっていく

元々雪広グループと超包子が関わる時点で普通以上を期待する者も多いが、結果はその期待に見事に答えた形になっていた

これに関して料理はやはり横島の功績が大きいが、インテリアや販売プロモーションに関しては立体映像の使用に踏み切った超鈴音の功績が一番大きい

超は横島の影響で料理が想定以上の質とインパクトを与えるのを見抜き、販売プロモーションやインテリアなどの料理以外の対応に精力的に動いた結果だろう



中には雪広グループ・超包子・マホラカフェ・工学部など協力組織が多いことから当然の結果だと皮肉る意見もない訳ではないが、規則の範囲内で最大限自由にやれるのが麻帆良学園の強みであり批判的な意見がそれほど広まることはない

それに生徒の保護者が参加するのは小等部を始め中等部や高等部でも決して珍しくなく、横島のように麻帆良在住の一般人生が生徒と協力することも決して珍しいことではない

雪広グループに関しては2-A以外にも協力や協賛してるイベントや出し物が多く、決して2-Aだけを特別扱いしてる訳ではないのだ

まあ選考もなく無条件で協力して内容も他より優遇してくれたのはあやかの存在が大きいが、そもそも保護者の協力自体は他にもありそれほど珍しいことではなかった

結果一つ一つを見れば前例と規則の中に収まるのだが、横島・超・あやかなど個性豊かなメンバーの相乗効果が前代未聞であったことは言うまでもない


「マホラカフェってどこの店だ?」

「知らんなぁ。 飲み物でも提供してるんじゃないか?」

さてそんなこの日に次々にやって来る客が一番首を傾げているのは、マホラカフェの存在だった

雪広グループと超包子と同じく規模で大々的に協力者として書かれているが、無名なマホラカフェの名前を知る者はそれほど居るはずがない

中には中等部や女子高生を中心に名物マスターの店だと知ってる者も居るが、それでも知らない者の方が圧倒的なのだ

知らない者の多くが飲み物の提供でもしてるのだろうと考えるのは当然の結果だろう

フレンチカレーは密かな噂になっていたがまさか喫茶店が考案したとは考えもせずに、雪広グループの系列レストランの新商品だと思われていたりする


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