麻帆良祭

一方横島が居ない店舗の方だが、こちらは予想以上に混乱していた

まず混乱し始めたのはサポート担当者達である

彼女達は食材のカットなどの下準備が主な仕事だが、下準備する順番や量の決定を横島がしていた為にどれを下準備すればいいか判断に迷ってしまい作業が遅れてしまう

横島の代わりに超と五月が仕切るが、自分の調理をしながら厨房全体に気を配るのは簡単ではない

超包子での経験が生きて大きな失敗こそないが、基本的に超包子は少数精鋭なので多くの人を仕切るのはあまり経験がない

加えて調理時間や下準備にかかる時間に客の動向などを考えていた横島と同じ事をするのは学生では不可能だった

人数が本番の予定より多いのでなんとかなっているが、本番を考えると不安が残ってしまう


(居なくなった途端に楽しむ余裕が無くなりましたね)

そんな混乱気味のサポート担当である夕映は、居なくなった途端に楽しむ余裕がなくなった厨房を冷静に見つめていた

横島が居た時はおしゃべりをしたり笑い声が聞こえる事も珍しくなかったが、今は誰もそんな余裕はない

まして横島のようにメニューにない物を作るなど超ですら無理である

しかも運の悪いことに二日間の営業の評判で、一昨日や昨日よりも客が多いことから余計に混乱していた


「ゆえ~、これどうする?」

「そうですね。 少し多めに準備した方がいいでしょうね」

横島の存在の大きさを冷静に考えていた夕映だったが、彼女もゆっくり考えてる時間などない

サポート担当者として食材の準備や中華まんの仕込みに忙しいのである


「今日は最後まで私達だけで行けるカナ?」

「難しいかも知れません」

「夕方には呼び戻した方がいいかもしれないネ」

そして調理をしながらも厨房に気を配って仕切っていた超と五月は、夕食時の前に横島を呼び戻した方がいいかと早々に相談を始めていた

実は今日の営業は昨日までより少しだけ遅くして、夜七時までにする予定だったのだ

まあ現在の状態だとなんとかなると考えていたが、これ以上混雑すると少々厳しい可能性がある

現状でも確実に料理を提供する時間が遅れており、これ以上混乱すると致命的なミスが起きても不思議ではない


「横島さんを呼び戻すのですか?」

「どのみち明日の営業の前に今日の反省会は必要ネ。 もう少し全体的な改善に向けた話し合いが必要だけど、彼が居ないと話にならないヨ」

「予想以上に横島さんに頼っていたのですね」

結局超と五月は横島を呼び戻す事を決めてあやか達に話すが、あやかも仕方ないと言わんばかりの表情であった

現状の不備の改善は当然必要だが、横島が居ないと短期間での改善は難しいのは明らかである

というか横島がいかに素人に近い少女達を上手く使っていたのか、彼女達はシミジミ感じていた

命令や強制などせずに楽しくかつ円滑に調理ができる環境を作るのは、天才超鈴音を持ってしても不可能だった

結局横島は夕方の混雑時の前に呼び戻される事が決まる




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