二年目の春・10

一方木乃香達は普通に授業を受けてお昼の時間になっていた。

麻帆良祭の余韻が消えないせいか、いまいち授業に集中できないが、お昼は一転して楽しい時間になる。

天気がいいことからクラスメートのみんなで中庭にてお弁当を広げていた。


「でさ! C組の佐藤さんと高等部の先輩がさ!!」

初夏の日差しが気持ちよく、吹き抜ける微かな風を感じながらお弁当を頂く少女達だが、話題は麻帆良祭で告白した。あるいは告白されたカップルのことだった。

特に一般人の少女は世界樹の前で告白したら結ばれるという都市伝説の話が本当だったのではと騒いでいる。

そんな友人の盛り上がる様子に、先日魔王やら世界の終わりの話を聞いた少女達は平和だなとしみじみと感じていた。


「で、木乃香達はなんか進展したの?」

ある意味自分達には関係ないなと盛り上がる雰囲気を楽しんでいた木乃香達だが、ふと矛先が自分達に向くとなんとも言えない笑みを見せていた。

恋人ではないが友人にしては近すぎる。

端から見るとハーレムのような家族のような他人からは理解しにくい関係であり、相変わらず進展をよく聞かれるが一番困る質問だった。

まあ男女間の友情ということも考えられるが、少女達が横島を男性として見ているのは周りから見たら明らかだった。


「ウチら当分は、今の関係でええよ」

本来恋愛に積極的な美沙ですら横島との話題ははっきりしないのは、年頃の少女には理解出来ないようだ。

ただ木乃香は嘘偽りなく、現状を無理に変える必要はないと感じている。

端から見てもわからないし理解も出来ないだろうが、少しずつ進んではいるのだ。

今年の麻帆良祭では横島の最大の秘密も知ることが出来た訳だし、確実に自分達は前に進んでいる。

一緒に居たい。

そんな思いが確実に形となっているだけでよく、他の横島に近い少女達もそんな木乃香に同意するように笑みを浮かべた。

ハルナなんかは面白そうに見ているだけだったが。


ちなみにそんな木乃香の少し大人びた表情に、少し興味深げな表情をしていたのは超鈴音だった。

先日の魔王の件からずっと横島の謎が頭の片隅に残っている。

木乃香達は何か知っているのだろうかと、超鈴音はふと気になるようだ。

別に横島の過去を暴く気はないが、まったく気にならないと言えばウソになる。

彼女の歴史にて未来に影響を与えた木乃香や明日菜たちが、横島いう男とどう関わりどう生きていくのか。

興味は尽きないというのが本音だろう。


そして部外者で唯一横島の過去を知るザジは木乃香の表情から、木乃香達もまた横島の過去を知っているのだろうと悟る。

横島の周囲に手を出してはいけない。

それは過去から明らかだった。

異世界にて何度も人類の危機を救い、世界すら救った男の逆鱗は少女達だと彼女は理解している。

奇跡は何度でも起きる。

それは彼女の父である魔王が語っていたことだ。

故にザジは明日菜のことを密かに監視して、利用しそうな魔族が近寄った場合には排除することを使命としている。

元々は明日菜の監視だけだったが、横島が来たことにより変わっている。

当然ながら魔族も一枚岩ではなく、魔法世界の問題に関しても対応や意見が分かれていた。

結局それぞれの立場で得られる情報がまったく違うが、それでも少女達は友人として掛け替えのない時間を共にしていくことになる。

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