二年目の春・10

この日の夕食は天ぷらだった。

いつものメンバーが揃う中、横島はフロアーで少女達の目の前で天ぷらを揚げてはそのまま揚げたてを少女達が食べていた。

揚げたてをやけどしないようにハフハフとしながら食べる天ぷらは美味い。


「あとは期末テストが終われば夏休みですね。」

「テスト嫌!」

ただのどかがテストのことを口にすると桜子は露骨に嫌だと言い、夕映や美沙なんかも少し嫌そうな顔をする。

まだ麻帆良祭の余韻が残るだけにある意味考えたくない現実なんだろう。

タマモはそんな桜子をきょとんと見つめつつ、ふうふうしながらエビの天ぷらを頬張る。


「そういえばさ。夏休みの旅行、どう? うちはお父さんとお母さんも来るわよ。」

今からテストの事を考えたくない美沙は、そんなタマモを見てクスっと笑みを浮かべると話を変える。

この夏に計画している旅行は、行先を雪広家の別荘の予定で娘の友人家族を招待する形で話はしている。

元々は異空間アジトで定期的にバカンスしている美沙達が苦労を掛けてる家族を旅行にと言い出したのがきっかけだ。

しかし実はこの件は少女達の間で親と横島を会わせる目的にもなっている。

横島には言ってないが、将来的には魔法の秘密や異空間アジトを教えて横島と一緒に生きる事を理解してもらう為の布石としても考えていた。

全員がそうではないが、大多数はハーレム状態の横島一緒に居る事と寿命の問題はいずれ家族に理解してもらう必要がある。

デリケートな問題なので時間をかける必要があるが、家族ぐるみで交流を持って様子を見ようということになっているのだ。


「うちは費用の問題が少し揉めてますね。」

「ああ、そこはね。」

ただここで少し問題なのが、旅行が雪広家の招待になっていることらしい。

夕映の家や円の家ではいいのかとか、いくらか払うべきではと議論になってるようだ。

それに夕映は父親との折り合いが悪いのも地味に問題になっていたりする。

夕映も父親も口下手でろくに口も利かない親子なだけに、父親を積極的に誘うべきか悩んでるようなのだ。


「こう、あれだよな。 親を友達に紹介するって微妙だよな」

ちなみに横島は少女達の目的は気付いてなく、なんとなく昔を思い出して微妙な表情をしている。

自分の親を学生時代に友人に紹介するのかと考えると、あまりいい気持ちはしないようだ。

まあ親父は未成年はともかくいい女を見つけるとすぐに口説くし、母親は高圧的に価値観を押し付けるような人なので横島としては考えられないことだろう。


「おっと次はなにがいい?」

「ではかき揚げを貰おうか」

時代も変わったなと半ば他人事の横島は、アナスタシアのリクエストでかき揚げを揚げながら少女達を見守っていた。

秘密というか隠し事がなくなり、横島は以前よりいろいろと楽になっていた。


「みんな大変よね」

ちなみに少女達で気楽なのは横島に男として興味がない円とハルナと夏美に、恋愛をいまいち理解してないさよに加えて、家族が高畑しかいなく家族への説明がない明日菜だった。

特にさよと明日菜は横島とも完全に家族のようになっていて、将来の説得がないのは彼女達の家族がいない事に対して数少ない利点だった。

尤もまき絵のようになんとかなると楽天的な少女もいるが。

結局横島はどんどん周りを固められているが、本人は相変わらずそこには鈍いので理解してなかった。

横島の過去も若い少女達には障害にすらならなかったらしい。

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