横島君のお店開店

「ウチ手伝うわ」

料理と聞き日頃から料理をする木乃香が自ら手伝う事を言い出すと、明日菜と夕映は少しホッとする

横島がどの程度料理が出来るのか楽しみな部分もあったが、正直言えば不安もあったようだ


そんな訳で料理を始めた横島は新品の包丁で野菜から切り始めるのだが、予想以上に慣れた手つきに三人は驚き目を見開いてしまう

決して派手さはないが、丁寧かつスピーディーな包丁裁きは料理が上手い木乃香ですら驚きだった


「料理って楽しいんだな……」

木乃香と一緒にテキパキとオムライスを作っていた横島だが、突如ボソッと呟いたその一言に三人は若干違和感を覚え首を傾げる

包丁裁きから見る料理の上手さとその言葉が、あまりに合わなく違和感があったのだから

そんな違和感を感じた三人だが、理由を聞くタイミングがないまま調理は進む

バターのいい匂いが厨房に広がる頃にはいよいよ卵でオムライスの仕上げに入るが、その手つきはやはり見事だった


「本当にわかんない人ね」

「失礼ですが意外過ぎるです」

結局手伝ったのは木乃香一人だった

明日菜と夕映も一応手伝おうとしたのだが、横島と木乃香の手際の良さに二人で十分だったのだ

二人が作るところを見ていた明日菜と夕映は、予想以上に料理が出来る横島を不思議そうに見ている

間違っても料理が得意なようには見えないし生活力すらないように見えるのに、実は料理が上手いという現実が信じられないようであった



「特製ふわとろオムライスだ。 熱いうちに食べようか」

完成したオムライスに、明日菜と夕映は目を白黒させながら木乃香に視線を送る

それはその見た目はそんじょそこらの店より、よほど美味しそうなのだから


「ウチは本当に手伝っただけやから、横島さんの味付けやで。 ウチは味見もしてへんから楽しみやわ~」

ニコニコと笑顔の木乃香がさっそく一口食べてみるが……


「ホンマに美味しいわ~」

木乃香の笑顔が更に幸せそうに変わったのを見た明日菜と夕映も食べ始めるが、予想以上の味に最早横島の料理の腕を疑う事はなかった


(そりゃ美味いだろうさ。 魔鈴さんの店のレシピなんだからな)

魔法料理として人気だった魔鈴のレシピを無事に再現出来た横島は、ホッとしながら自分も懐かしい味を口にする


(料理作るって楽しいんだな。 魔鈴さんが店にこだわった気持ちが分かる気がするよ)

食材が料理になり美味しそうに食べる木乃香達に、横島は少しだけ魔鈴の気持ちが理解出来た気がした

横島自身はGSのバイトしかした事がなく、横島に魂のカケラを託した者達でもオカルト以外の経験があるのは魔鈴くらいだったのだから、その経験は貴重なものだった



「ごちそうさまです。 これならば店に出しても客を呼べるですよ」

「そうね~、レストランとか喫茶店がいいんじゃない?」

「占いレストランか占い喫茶店やね」

オムライスをあっという間に完食した三人は、どうせだからこのまま飲食店がいいだろうとの考えで一致している

木乃香は相変わらず占いにこだわっているが、一応占いだけじゃ客が少ないのは理解してるようであった



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