二年目の春・10

「お待たせや。」

「わ~! 熱々だね!」

さてこの日の横島の店では、麻帆良祭で多少余った一口揚げパンの在庫を使った揚げパンを日替わりメニューとして提供していた。

油で揚げるだけで調理が簡単で美味しいので、学生を中心に結構人気だった。


「美味しそうだけど、カロリー高そうよね。」

この日は仮設店舗では出来なかったアイスやホイップクリームやとろけるチーズと一緒に提供したりと、一工夫することも忘れていない。

年頃の女の子が常連に多いのでメニューを見ながらしばらく悩む者も少なくないが、人が食べてると食べたくなるのか頼む人が多い。


「ねえ、マスターこれなんかどう? 私に似合うかな?」

「俺に下着を聞くんじゃないっつうの。 俺は爽やかなイメージが壊れるだろうが!」

なお横島に関しては相変わらず女子中高生に絡まれていた。

ファッション雑誌の下着のページを見せて、からかうように声を掛けてくる女子中高生に横島は相変わらず振り回されている。

横島のどこに爽やかなイメージがあるかは誰にも分からないが、本人的にはやはりそこに拘るらしい。


「マスターも下着を脱がせることばっかり考えてちゃ駄目よ? 男の子って、せっかく可愛い下着を着ても脱がせることしか考えてないんだから。」

「……なあ。 俺なんか悪いことしたか?」

「マスター。 女ったらしだから。 被害者友の会会員としてはマスターを更生させる義務があるわ。」

「俺がいつ何をしたよ。」

かつてはモテないと血の涙を流した横島が、今は女ったらしだと女子中高生に言われる。

本当に皮肉だなと横島自身思うし、ピート辺りが聞いたらどんな反応するのかと思うと苦笑いが出そうになるが。


「人間なんて分からないものですね。」

一方夕映はそんな横島を眺めながら、人の内面や過去など分からないものだと改めて思う。

その気になれば選り取りみどりで、やりたい放題だって出来るはずなのだ。

決して自制心が確固たる聖人のような男ではない。

誘惑に悩み耐えながら、なんとか今の状態を維持してるだけなのだ。


「本質的に女好きなのは確かよね。」

「でもそれって普通じゃない?」

「まあ普通よね。」

お昼頃になると店には美砂達も来ていたが、端から見るとからかわれてるというか若干いちゃつくように見える横島に少しため息を溢していた。

彼女達は世界や神や魔王なんて、正直あまり実感が持てないでいる。

彼女達にとっては結局は横島は横島でしかなく、そんな過去もあったんだなという程度に落ち着いている。

ぶっちゃけると美砂は特に過去よりも、今いちゃついている横島に面白くない。

百歩譲って友人達とのハーレムは許すが、他の女といちゃつくのは許せない気持ちがある。

どうにかして横島ともっと深い絆が欲しいと思案していくことになる。


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