二年目の春・10
一方メガロメセンブリアではクルト・ゲーデル逮捕の話題が連日過熱していた。
『堕ちた英雄』『汚れた翼』『赤き翼の真相』など様々な題名のメディアがクルトの問題を取り上げているが、それはクルトのみならず赤き翼の過去や面々にも注目が集まっている。
叩けば埃がというのは赤き翼も同じで、元々ナギが魔法学校中退という経歴の問題児だったことを筆頭に赤き翼の負の側面を強調する報道も少なくない。
数多の人を救い世界も救ったが、同時に法律や社会の秩序を乱した問題行動もまた多かった。
無論背後にはメディアを牛耳るメガロメセンブリアの権力者達の意向と思惑があり、大戦後二十年が過ぎても衰えぬ赤き翼の人気を少しでも落としたい思惑がある。
肝心のクルトは逮捕された後に当局の取り調べを受けているが、こちらは全て黙秘してしまい真相が闇の中となっていた。
尤もクルトが世界の限界や二十年前の真相なんか語っても握り潰されて、下手をすれば暗殺されるだけだが。
「馬鹿どもは闇取り引きで口封じか。」
「最終的に家族や身内を人質に取られたようなモノですから。」
クーデターに荷担していたクルト一派は一部逃亡しているが大半は捕まり、元老院との闇取り引きにて二十年前の真相や世界の限界を黙る代わりに数年で恩赦を与えることなどで口をつぐんだ。
現代の地球側の国家でさえ暗殺を用いる国家は存在する。
まして魔法という力があり、かつては何の罪もないネギの村を襲わせた元老院を知る者達は最早抵抗する気はなく素直に従っていた。
流石に当局の拘留施設で殺される事はないが、家族などを人質に取られたようなものであり、それを示唆するだけで頑なに抵抗する者はクルトを除いて皆無になる。
「分かっていた事とはいえ……。」
悠久の風のエレーヌは不機嫌そうな表情で腹心のセドリックが持参した報告書を自身のデスクに放り投げた。
彼女とて喜んでクルトを捕らえる協力をした訳ではなく苦渋の決断だったのだ。
「元老院。 いえメガロメセンブリアの支配階級がこの程度で方針転換するなら、ゲーデル議員もあのような事は考えなかったでしょう。」
期待はしてなかった。
メガロメセンブリアを牛耳る一部の特権階級は魔法世界の存続を諦め、自分達だけで地球への帰還を考えている。
正確には魔法世界の本来の継承者が不明で、どうしようもないとも言えるが。
ただ彼らも悠久の風には配慮していた。
悠久の風が保護したクルト一派の真相を知らないまま協力してしまった者達は嫌疑不十分で早々に釈放されている。
旧世界にも強いパイプがあり、高畑が所属する悠久の風は現在のメガロメセンブリアでもそれなりに影響力があるのだ。
メディアの赤き翼叩きも高畑と詠春など悠久の風と繋がりがある者はほとんどされてなく、主にナギの過去をほじくり返して行われていたくらいだった。
エレーヌもセドリックも結果に満足はしてない。
しかしここらが妥協点であることは、彼女達が一番よく理解している。
「やれやれ。 クルト坊やはどうなるかね。」
「当局としては殺したいのが本音かと。 あまりに危険な男ですから。 ただあそこまで有名になると暗殺もリスクが高いですから。」
悠久の風はクルトの扱いについては口を挟んでない。
その他の人々を助けるためにもクルトまで口を挟めば、元老院との交渉が決裂する可能性が高かったのだ。
正直エレーヌがクルト逮捕に直接動かなければクルトは暗殺されていた可能性が高い。
それを知るが故にエレーヌは自らクルト逮捕に協力している。
極論を言えば拘置所や刑務所がクルトにとって一番安全な場所なのは、皮肉にしか思えないが。
『堕ちた英雄』『汚れた翼』『赤き翼の真相』など様々な題名のメディアがクルトの問題を取り上げているが、それはクルトのみならず赤き翼の過去や面々にも注目が集まっている。
叩けば埃がというのは赤き翼も同じで、元々ナギが魔法学校中退という経歴の問題児だったことを筆頭に赤き翼の負の側面を強調する報道も少なくない。
数多の人を救い世界も救ったが、同時に法律や社会の秩序を乱した問題行動もまた多かった。
無論背後にはメディアを牛耳るメガロメセンブリアの権力者達の意向と思惑があり、大戦後二十年が過ぎても衰えぬ赤き翼の人気を少しでも落としたい思惑がある。
肝心のクルトは逮捕された後に当局の取り調べを受けているが、こちらは全て黙秘してしまい真相が闇の中となっていた。
尤もクルトが世界の限界や二十年前の真相なんか語っても握り潰されて、下手をすれば暗殺されるだけだが。
「馬鹿どもは闇取り引きで口封じか。」
「最終的に家族や身内を人質に取られたようなモノですから。」
クーデターに荷担していたクルト一派は一部逃亡しているが大半は捕まり、元老院との闇取り引きにて二十年前の真相や世界の限界を黙る代わりに数年で恩赦を与えることなどで口をつぐんだ。
現代の地球側の国家でさえ暗殺を用いる国家は存在する。
まして魔法という力があり、かつては何の罪もないネギの村を襲わせた元老院を知る者達は最早抵抗する気はなく素直に従っていた。
流石に当局の拘留施設で殺される事はないが、家族などを人質に取られたようなものであり、それを示唆するだけで頑なに抵抗する者はクルトを除いて皆無になる。
「分かっていた事とはいえ……。」
悠久の風のエレーヌは不機嫌そうな表情で腹心のセドリックが持参した報告書を自身のデスクに放り投げた。
彼女とて喜んでクルトを捕らえる協力をした訳ではなく苦渋の決断だったのだ。
「元老院。 いえメガロメセンブリアの支配階級がこの程度で方針転換するなら、ゲーデル議員もあのような事は考えなかったでしょう。」
期待はしてなかった。
メガロメセンブリアを牛耳る一部の特権階級は魔法世界の存続を諦め、自分達だけで地球への帰還を考えている。
正確には魔法世界の本来の継承者が不明で、どうしようもないとも言えるが。
ただ彼らも悠久の風には配慮していた。
悠久の風が保護したクルト一派の真相を知らないまま協力してしまった者達は嫌疑不十分で早々に釈放されている。
旧世界にも強いパイプがあり、高畑が所属する悠久の風は現在のメガロメセンブリアでもそれなりに影響力があるのだ。
メディアの赤き翼叩きも高畑と詠春など悠久の風と繋がりがある者はほとんどされてなく、主にナギの過去をほじくり返して行われていたくらいだった。
エレーヌもセドリックも結果に満足はしてない。
しかしここらが妥協点であることは、彼女達が一番よく理解している。
「やれやれ。 クルト坊やはどうなるかね。」
「当局としては殺したいのが本音かと。 あまりに危険な男ですから。 ただあそこまで有名になると暗殺もリスクが高いですから。」
悠久の風はクルトの扱いについては口を挟んでない。
その他の人々を助けるためにもクルトまで口を挟めば、元老院との交渉が決裂する可能性が高かったのだ。
正直エレーヌがクルト逮捕に直接動かなければクルトは暗殺されていた可能性が高い。
それを知るが故にエレーヌは自らクルト逮捕に協力している。
極論を言えば拘置所や刑務所がクルトにとって一番安全な場所なのは、皮肉にしか思えないが。