二年目の春・10
「……どうなったのですか?」
「殺された。 和平派中立派もろともな。 生き残ったのは横島と神魔の最高指導者の三名のみ。」
共に決着を付けたい神魔の主戦派が組むという裏技に、和平派や中立派は見事にハマった。
無論裏があると感じていた者も居たし土偶羅も罠だと言ったが、千載一遇のチャンスを棒に振ることは誰にも出来なかった。
神魔の最高指導部にも裏切りの主戦派が居たことが致命的と言えば致命的で、気付かなかった最高指導者のミスとも言える。
しかしそこまで絶対的な力の差がある訳でもないだけに、終焉への流れは誰にも止められなかった。
「そんな……」
「横島は近くにいた美神令子や小竜姫達に守られたおかげで辛うじて生きていた。 横島はそんな状況が信じられなかったのだろう。 放心状態のまま立ち尽くしていた。」
それはあまりに残酷で話を聞く者達も言葉を失い、涙が止まりかけたほどだった。
「連中の目的は非主戦派の壊滅と神魔の最高指導者の殺害。 横島は眼中に無かったのだろう。 その場でしばらく放置された。 そしてその猶予が奇跡を再び起こした。 亡くなった仲間の魂の一部を横島は無意識に受け入れ自らの力とした。 ルシオラのようにな。 それが今の横島になる。」
実のところ横島自身もその時の明確な記憶はなく、具体的な手段は覚えていない。
横島の意思なのか、亡くなった者達の意思なのか。
それとも双方なのかは未だにはっきりしていないことだった。
「その後の横島は自らの意思で、主戦派の神魔を倒していった。 当初は相手から襲ってきたが、敵わぬと理解すると立場が逆転する。 ワシが隠れている連中を探して横島が始末していった。 そして横島は最後の最後に神魔の最高指導者相手に決着を付けるべく戦いを挑んだ。」
数年にも渡り横島はじわじわと主戦派の神魔を追い詰めて苦しめながら倒して行った。
最早横島は横島ではなかったのかもしれない。
「決着は付かなかった。 いや、付けられなかったと言うべきか。 あの二人は数多の世界を管理している同一体だ。 消してしまうば数多の世界に影響が出るからな。 その後は終わりゆく世界を見届けて新天地を求めて麻帆良に来た。」
ようやく横島の長い長い過去が終わった。
その衝撃はあまりに大きく、完全に消化しきれていない部分もある。
「まるで聖書や神話のようね。」
「かもしれぬ。 アシュ様の遺したこの異空間世界はノアの方舟のような物にも思える。 だが状況はそう悲観する程でもない。 少なくとも横島の親しい仲間達は復活させることも可能だ。」
「死者の蘇生も可能なのですか?」
「可能だ。 アシュ様は自ら生命の創造をして世界すら創造したのだ。 その技術や知識は全て遺産として残されていて、横島ならば使える。」
「……アシュタロスの遺産の本当の価値は……」
衝撃が強すぎたのだろう。
悲しみや混乱や戸惑いで放心状態に近い周囲に、土偶羅は最後に失った者の復活の可能性とアシュタロスの遺産の真の価値を打ち明けた。
「お前達には感謝している。 横島は人として生きたいと願ったからな。 お前達のおかげで横島は人に戻れたのやもしれん。」
「ウチらは……」
「そう言えば横島さんは?」
「恐らく霊動シミュレーションであろう。 あの男が逃げていく先などたかが知れている。」
ずっと知りたかった過去は誰もが想像したより残酷で凄まじいものだった。
軽々しく聞かないで良かったと思う反面、自分達は横島にどう言葉をかけてやるべきかと悩むが、そんな時ようやく横島がいつまでもお風呂から出てこない事に気づく。
「逃げたって……」
「怖いのだ。 過去を知られるのが。 どれだけ力を得ようと横島の精神は人だからな。」
そして少女達は更なる衝撃を受けてしまった。
横島が怖いからから逃げ出したという事実に。
「殺された。 和平派中立派もろともな。 生き残ったのは横島と神魔の最高指導者の三名のみ。」
共に決着を付けたい神魔の主戦派が組むという裏技に、和平派や中立派は見事にハマった。
無論裏があると感じていた者も居たし土偶羅も罠だと言ったが、千載一遇のチャンスを棒に振ることは誰にも出来なかった。
神魔の最高指導部にも裏切りの主戦派が居たことが致命的と言えば致命的で、気付かなかった最高指導者のミスとも言える。
しかしそこまで絶対的な力の差がある訳でもないだけに、終焉への流れは誰にも止められなかった。
「そんな……」
「横島は近くにいた美神令子や小竜姫達に守られたおかげで辛うじて生きていた。 横島はそんな状況が信じられなかったのだろう。 放心状態のまま立ち尽くしていた。」
それはあまりに残酷で話を聞く者達も言葉を失い、涙が止まりかけたほどだった。
「連中の目的は非主戦派の壊滅と神魔の最高指導者の殺害。 横島は眼中に無かったのだろう。 その場でしばらく放置された。 そしてその猶予が奇跡を再び起こした。 亡くなった仲間の魂の一部を横島は無意識に受け入れ自らの力とした。 ルシオラのようにな。 それが今の横島になる。」
実のところ横島自身もその時の明確な記憶はなく、具体的な手段は覚えていない。
横島の意思なのか、亡くなった者達の意思なのか。
それとも双方なのかは未だにはっきりしていないことだった。
「その後の横島は自らの意思で、主戦派の神魔を倒していった。 当初は相手から襲ってきたが、敵わぬと理解すると立場が逆転する。 ワシが隠れている連中を探して横島が始末していった。 そして横島は最後の最後に神魔の最高指導者相手に決着を付けるべく戦いを挑んだ。」
数年にも渡り横島はじわじわと主戦派の神魔を追い詰めて苦しめながら倒して行った。
最早横島は横島ではなかったのかもしれない。
「決着は付かなかった。 いや、付けられなかったと言うべきか。 あの二人は数多の世界を管理している同一体だ。 消してしまうば数多の世界に影響が出るからな。 その後は終わりゆく世界を見届けて新天地を求めて麻帆良に来た。」
ようやく横島の長い長い過去が終わった。
その衝撃はあまりに大きく、完全に消化しきれていない部分もある。
「まるで聖書や神話のようね。」
「かもしれぬ。 アシュ様の遺したこの異空間世界はノアの方舟のような物にも思える。 だが状況はそう悲観する程でもない。 少なくとも横島の親しい仲間達は復活させることも可能だ。」
「死者の蘇生も可能なのですか?」
「可能だ。 アシュ様は自ら生命の創造をして世界すら創造したのだ。 その技術や知識は全て遺産として残されていて、横島ならば使える。」
「……アシュタロスの遺産の本当の価値は……」
衝撃が強すぎたのだろう。
悲しみや混乱や戸惑いで放心状態に近い周囲に、土偶羅は最後に失った者の復活の可能性とアシュタロスの遺産の真の価値を打ち明けた。
「お前達には感謝している。 横島は人として生きたいと願ったからな。 お前達のおかげで横島は人に戻れたのやもしれん。」
「ウチらは……」
「そう言えば横島さんは?」
「恐らく霊動シミュレーションであろう。 あの男が逃げていく先などたかが知れている。」
ずっと知りたかった過去は誰もが想像したより残酷で凄まじいものだった。
軽々しく聞かないで良かったと思う反面、自分達は横島にどう言葉をかけてやるべきかと悩むが、そんな時ようやく横島がいつまでもお風呂から出てこない事に気づく。
「逃げたって……」
「怖いのだ。 過去を知られるのが。 どれだけ力を得ようと横島の精神は人だからな。」
そして少女達は更なる衝撃を受けてしまった。
横島が怖いからから逃げ出したという事実に。