二年目の春・9

別荘のお風呂は広かった。

数人がゆっくり足を伸ばして入れるバスタブに横島はハニワ兵達とお風呂に入っている。


「ぽー?」

「大丈夫だよ。 この程度のこと昔は何度もあった。」

バスタブでゆっくりとくつろぎ、タオルで目を隠すようにしている横島にハニワ兵達は心配そうに声をかけた。

全く精神的に動揺がないと言えば嘘になるが、結果的に見ると悪くない再会だった。

横島が前に進むには必要な再会だったのだ。


「世界やら人類やら、個人が抱えられるもんじゃねえからな。」

「ぽー。」

あのアシュタロスですら抱えきれずに死を選んだモノと、なんで自分ごときが向き合い抱えねばならんのかと横島は愚痴らずには居られなかった。

しかし、世界を終わらせる一端を担った責任は確実に横島にもある。

例えそれが横島が望んだ結末でなくとも。


「みんな、どんな反応すっかな。」

そして横島は怖かった。

今の居心地のいい生活が失われるのではと考えると。

だからこそ、自分で少女達に説明出来なくて土偶羅に丸投げしてしまっている。

横島は今も変わらず臆病でヘタレだった。




「さて、何処かは話そうか。」

「横島とアシュタロスの関係から話せ。 そこに全ての鍵があるのだろう?」

一方土偶羅は何を何処まで説明しようかと周りに問い掛けると、アナスタシアは先の魔王ではなくアシュタロスと横島の関係から聞きたいと口にする。


「うむ。 そうだな。 なかなか一言では言えぬが……。」

土偶羅はあまりに単刀直入に切り込むアナスタシアに少し迷いの表情を見せた後に語り出す。

世界というシステムに挑み、そこから抜け出そうとした誇り高き魔王の真実を。

そして魔王に抗う人間達の過去を。


「やっぱり横島さんは……」

「戦ったんですね。 アシュタロスと。」

それはあまりに荒唐無稽な真実だった。

神魔が実在して世界の成り立ちや発展に陰に日向に関わりがある世界の陰の真実。

魔王が魔王であることから抜け出そうとしたという、あまりに悲しい真実。

そんな魔王と偶然にも関わることになった横島の前世から始まる奇妙な因縁と、まだ弱く無力だった横島が魔王を倒すまでに至る奇跡の歴史。

少女達が最初に驚き固まったのは、横島の前世がアシュタロスにより殺された時だった。

流石にショックが大きいらしく、話に付いていけてなかったタマモ以外はあまりのショックに涙すら出ないほどだった。

ただ土偶羅は淡々と語る。

横島の前世と再会の約束をした、メフィストという魔族の女の生まれ変わりと横島の再会したことも。

平凡な家庭に生まれ戦いとは無縁な幼少期を過ごした横島が彼女との再会により、再び闇と戦いに接してしまうことも。

美神令子と横島の物語はアシュタロスに関わる戦いを繰返していくことも。

少女達の反応は様々だ。

その先に何が待つのか薄々勘づいている者も居れば、全く気付いてなく横島ならばきっとハッピーエンドにすると単純に考えてる者もいる。

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