二年目の春・9

「おもしろかった! なつみちゃんすごい!」

「そう? なんか恥ずかしいな。」

さて演劇を見た横島達は夏美と合流して、そろそろお昼になることから昼食を何処で食べようかと店を探していた。

当然ながら飲食関係の出し物や出店はいくらでもあり、いざ昼食となると迷ってしまう。


「屋台で買って軽く食べよっか。」

「うん! 賛成!」

この日の横島達は夕方から店の当番なので、少し早い夕方には軽く食べないといけない。

従ってそれに合わせてお昼も屋台で買って、みんなでつまむようになすることにする。

食堂のような出し物もあるが、時間的に総じて混んでることも屋台にする理由にあるが。

青空の下で野外のベンチに座り、いろんな屋台の料理を集めて食べると話も弾む。


「公演は終わり?」

「ううん。 夕方にもあるよ。 それで終わりかな。」

演劇部は一日三回公演して三日で九回公演するので、結構拘束時間が長い。

しかも配役があるので休めなく、なかなかハードらしい。


「でもさ。 せっかくの麻帆良祭なんだから、ドキドキするような想い出が欲しいね。」

「郊外に遊園地あったよな。 行くか?」

「そのドキドキじゃなーい!!」

たこ焼き・お好み焼き・焼きそば・焼きとうもろこし・クレープ・焼き鳥などなど。

いろんな料理をつまみながらこのあとの予定を考えるも、美砂は駄目だろうと分かっていながら、ついつい想い出になる何かが欲しいと少し期待した表情で語るが。

横島がとんちんかんな答えをすると、即否定した。

なんというか、恋愛要素を抜きにした仲の良さばかりが進展してしまいそこに僅かな不満があるらしい。

この三日間、女子中等部でも多くのカップルが出来ている。

時期的に夏も近いので麻帆良祭で付き合って、夏を越えたら別れるカップルが多かったりするが。


「まあ、横島さんですしね。」

「うん。」

ただまあ美砂に限らず周りは横島の恋愛に対する態度が消極的であることは理解しているので、半ば諦めにも似た気持ちで受け止めていた。

完璧な人など世の中には居ないし、何をやらせても人並み以上に出来る横島にも欠点はある。

そもそも横島が普通に恋愛に積極的なら刀子や女子大生辺りと付き合いそうなので、それはそれで困るので痛し痒しといったところだ。

それに自分達で周りを固めておいて何なんだが、手当たり次第に女に手を出すような人も女性として望ましくはない。


「というか中学生に手を出したら犯罪やろうが」

「そこで法律を持ってくる?」

「まだ若いんだし焦るなって。」

ちなみに横島も全く美砂の言いたいことを理解してない訳ではない。

ただ中学生の少女達を自分の側に引き込むのは、未だに躊躇する。

普通に大人になり生きていく道を塞ぐようなことはしたくはない。

まあ、いろいろ理由をつけて逃げてるヘタレなだけでもあるが。


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