二年目の春・9

その後まき絵は母親と弟と家族水入らずで麻帆良祭を見物するらしく横島達と別れた。

一行が次に向かったのは、図書館探検部の図書館島の地下探検ツアーだった。

しばらく忙しくてすっかり御無沙汰になっているが、木乃香達は今も図書館探検部であり今回は案内役はやらなかったがタマモが行きたいと言うので参加することにしたらしい。


「へぇ。 噂以上に凄いわね~。」

「もっとすごいところもあるんだよ!」

ただ意外な事に美砂達は図書館島の地下は初めてらしく、ここは日本かと思うような地下に素直に驚いている。

タマモは案内は任せてと美砂達に図書館島の地下の話を語っていて、嬉々として語るタマモの姿に少女達は笑みを溢していた。

今回見学コースになっているのは一般の閲覧が可能な地域の為、危険などない序の口のコースであったが。


「いっしょにね。 おうたうたったり、あそんだりしたんだよ!」

タマモにとって図書館島の地下は楽しい場所らしい。

木乃香達が蔵書の調査を行う中、タマモは横島とゆっくり遊べるのが何より嬉しいようだった。


その後、木乃香やのどかは麻帆良に滞在中の母親や家族と一緒に麻帆良祭を回るらしく別れていき、少し人数が減った一行は休憩を兼ねて女子中等部のクラスの喫茶店に来ていた。


「あっ、タマちゃん。 いらっしゃい!」

「きっさてんだ!」

タマモは喫茶店には煩い。

何より喫茶店が家なだけに、教室を使った喫茶店を興味津々な様子で眺めていく。

ライバルでも見る感じだろうか。

お客さんみんなが楽しげにしてる様子に、嬉しそうにしながらも負けてられないと何故か燃えていた。


「このあとは?」

「演劇部のお芝居なんてどう?」

「いいわね。」

横島やタマモが一番知り合いが多い女子中等部をそのまま一行は見てあるくが、次は夏美が所属する演劇部のお芝居の時間がちょうどいいので見に行く事にする。

タマモは例によっていろんな友人知人からあれこれとお菓子やお土産を貰い、風船を片手に演劇部のお芝居が行われる講堂に入った。


「こういうとこは文化祭らしいな。」

一方の横島は女子中等部の校舎は意外に普通の文化祭らしさがあって見ていて楽しいようだった。

大学部近辺のレベルの高い出し物なども悪くはないが、女子中学生が普通にやる文化祭もまた悪くはない。

横島自身、女子中等部ではモテる方なのでそれで機嫌がいいということもあるが。


「青春してるなぁ。」

「マスター。 おっさん臭いわよ」

尤も麻帆良祭期間中は男子も女子中等部の校舎に来れる事から少なくない男子が来ていて、中にはいい感じにカップルになっている者達も結構見かける。

昔の横島じゃあるまいし盛りのついたと言うのは言い過ぎだが、やはり異性との出会いが欲しい年ごろなのだろう。

ついつい昔の友人の口癖が出てしまった横島に、少女達はまた突然歳上目線になった事を指摘して笑っていた。

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